≪五節;同じき存在≫
〔友好関係を結んだ国同士の交流―――その為の官同士の交流はもとより、国家元首間の交流は当然の如くに行われるモノでした。
そしてそこでは、それがさも当然であるかの如くに、ルリとアヱカは対面を果たしていたのです。
ですが・・・嘗て、ある者と因果関係にあった者は、少し前にこの国に姿を見せていた人物が、
どうして今の・・・このタイミングで―――衆目(しゅうもく)に晒されようとしたのか・・・判ってしまいました。
しかし、そこには誰もいない―――・・・自分たち以外は・・・
そのはずだったのに、アヱカは―――確信すらしていたのです。
誰に知覚されるでもなく・・・この場に既に来ている存在―――
元はと云えば、自分の意義存続の為、掛けておいた「保険」―――その存在が、既にいると云う事実に・・・
すると―――・・・〕
フフフ―――・・・
プ:既に気付いておったか・・・まあ、よい―――
それよりも、覚悟の方はよかろうなぁ・・・もう一人の吾―――「ヱニグマ」よ・・・。
ア:・・・いつでも―――その為にわたくしはここに現れたのです。
お前と云う・・・わたくしが過去に蒔いた禍根の種を、わたくし自身の手で除去する為に。
プ:フッ―――フフ・・・何を勝手な事を・・・
元はと云えば、この惑星(ほし)を我がモノにせんと計画し、その為に創りだされた「保険」こそが吾ではなかったか―――
ア:その通り・・・その事を否定は致しません。
ですが―――お前が今存在するのは間違っている、それは施主(せしゅ)であるわたくし自身が云っているのです。
大人しく無へと帰りなさい。
プ:フ―――フン・・・呆れたモノだ・・・そうすること自体、己(おのれ)の意志を完全に否定している事だと判らぬとは・・・
だが、吾とてそう易々と滅ぼされるわけにはいかぬ、逆に汝を取りこみ、完全体となってまたヱニグマに戻るまで。
ア:なんと云う・・・おぞましいことを―――
まだ判らないと云うのですか、あの存在がいかに「虚ろ」だったか―――と、云う事を。
プ:「虚ろ」・・・ああ、そうだ―――だから世を混沌へと導いた・・・「混沌の闇」こそ、吾らの存在意義(レゾン・デートル)―――その事を忘れたか・・・ヱニグマ!!
〔此方(こなた)からの呼び掛けに応じ、何もない空間から穴が開くと・・・そこからたった一人―――現れた存在がいました。
まるで蝋のようにくすみ、朧げなる「白」―――・・・
容姿はどことなく整い、やもすれば美系であるかのようなのに、どこか薄汚れた・・・薄気味悪い女性―――
それが―――プルミエール=ド=オプスキュリア(最初の闇)・・・なのです。
そこでアヱカとプルミエールは、闘争の前戯として自らの主張を云い合いました。
プルミエールを間違った存在だとするアヱカ―――・・・ならば、その間違った存在を創造したことを非難するプルミエール・・・
元はと云えば同じ存在―――けれども、時が経ち・・・ある者の教化に入ったアヱカの方は、以前とは考え方も・・・また存在の紡ぎ方まで違わせていたのです。
けれど、元の存在意義を崩す事のなかった者は、アヱカを打ち負かした後―――存在ごと取り込むことで、元の存在・・・
『純粋なる悪意を持つ誰でもない者』―――「ヱニグマ」となって、また再び・・・蒼く美しき天体―――「地球」を我がモノとしようとしていたのです。
そんな・・・プルミエールのおぞましき計画を耳にした者は、断固たる決意と確固たる信念に基づき、その志を同じくする者の協力の下、プルミエールの野望を打ち砕かんとしていたのです。〕