≪六節;凄絶なる闘争≫
〔そして―――今・・・これまでの歴史上にない、凄絶なまでの激闘の幕が開かれたのです。〕
プ:―――・・・。
ア:―――・・・。
プ:―――――!!
――=インファナル・アフェア=――
ジ:(プルミエールが先に仕掛けた?!)
―――アヱカ!!
ア:くうぅっ―――・・・!
ジ:(あれを防ぎきった・・・!
しかし、あれは確かにヱニグマのモノ―――あの当時の私でも、相当に手を焼かされた厄介な業(わざ)だった・・・
それを、模造品(コピー)だとは云え、使えてしまえると云うのは・・・)
〔互いに向き合い―――相手がどう出るか・・・探り合いをしていた時、先手を打ってきたのはプルミエールの方でした。
しかも彼方が仕掛けてきたのは、過去においても女禍が幾度も受け・・・時には挫けそうにすらなった、畏るべき業(わざ)・・・
けれどそれを、アヱカは防ぎきったようですが―――それでもプルミエールの方は、未だ余裕すら貌(かお)に浮かべ・・・〕
プ:フ―――フ・・・なるほどな、この程度ではこたわぬか・・・
それより、吾が因縁の宿敵女禍よ・・・何か勘違いしているのではないか―――
吾は、ヱニグマの模造品(コピー)などではない、過去に汝と鎬を削り合った当時の、ヱニグマの意思を脈々と受け継ぐ者・・・
これが何を意味するか、汝には判るか―――つまり、ここにいるのはプルミエールであり・・・そしてヱニグマなのだ!!
それに・・・今のに耐えた事に歓びを感じているようだが―――いいのか・・・今のは全力の5%しか出してはおらぬのだぞ・・・
ジ:なに―――?! そんな・・・今ので―――!?
〔口に出したはずはない―――ジョカリーヌの弁(ことば)を、プルミエールは読み取りそれを否定しました。
そう・・・彼(か)の者は、自分が「ヱニグマ」だと云う事を疑わず―――それどころかそれを誇りにすら思っていた・・・
それに・・・今防ぎきったあの業(わざ)も、ほんの小手調べだと云うに至り、さすがのジョカリーヌも焦りを隠せずにいたのですが・・・〕
ア:・・・なるほど、今のが5%―――よく判りました、そして後悔することとなるでしょう。
今の―――初撃にてわたくしを仕留められなかった、その事に・・・
お前は確かに強い・・・過去に女禍と争っていた当時のわたくしよりも―――けれども、今はっきりとした事が云えます。
やはりお前は・・・あの時と同じように―――その傲慢さ故、敗れ去るのです!
プ:フ―――・・・何をたわけた事を! その減らず口、二度と利けぬようにしてくれる―――!!
――=インファナル・アフェア=――
ア:(―――今!) ジル・・・あなたの顕現(ちから)―――お借りします!
――〜契約により、此方の言の葉を封じる力となれ〜――
――=ヴェリザの方陣;ヴォイト・エクスキューション=――
プ:―――ぅぐおぅ!? こ・・・これは―――マエストロの?!
お・・・おのれえぇ・・・貴様―――どういうつもりだ! 貴様の業(わざ)を行使せず、あたら他の者の顕現(ちから)を拝借するとは!!
ア:・・・なんとでもお云いなさい―――
所詮お前は・・・いえ、わたくしは―――どこまで云っても孤独・・・
己の強さゆえに・・・真の仲間は必要としない―――そうとさえ思っていた・・・
ですが、このわたくしも一個の人間に生まれ変わった事で、そこで初めてその考え方が間違いであった事に気付いたのです。
今は・・・一人では何もできないわたくし―――それが・・・弱き存在である人間達も、結束をすれば強き存在に抗えるのです!
さあ・・・今こそ思い知りなさい、結束の力と云うモノを―――!!
〔プルミエールが行使した業(わざ)が、ほんの小手調べ―――戯れ程度であった事は、同じき存在であるアヱカが一番よく心得ている事でした。
だからこそ諭したのです、何を措いても初撃で仕留められなかったプルミエールに・・・最早勝機は有り得ない―――と。
するとプルミエールは、今一度・・・今度は全力での開放を試みるのですが、それを先読みしたアヱカは信じられない行動に出たのです。
そう―――・・・過去においての、もう一人の宿敵である・・・「マエストロ・デルフィーネ」―――
その人物が最も得意としている「神霊術(セレスティアル・ローアー)」の一つを、借りる象(かたち)で行使したのです。
そして・・・そこでアヱカは、なぜ自分が過去に敗れたか―――を、もう一人の自分に諭(さと)しました。
それが「強きゆえの孤独」・・・喩え強くとも、所詮は「個」―――弱くとも結束した者達には、到底敵わない・・・と、云う事を。〕