<第二十五章;光の中に・・・>
≪一節;虚しき勝利≫
〔その「個」の、総ての力を封じ込めた―――・・・
そのはず・・・だったのに―――・・・
今、この場にいる多くの者達の目の前で繰り広げられた惨劇は、現実の映像―――・・・
幻で彩られた、虚構ではありませんでした。
それに、今プルミエールが行使した業(わざ)は、以前自分と闘った事のある「ヱニグマ」も使っていなかったモノ・・・
そう―――考えられる事は、只一つ・・・
プルミエールも、この日の為に「進化」し、また新たな業(わざ)を会得していたのです。
「総てに抗える力」・・・それと同時に、全力での「終極無間」―――
それにより、無惨にもアヱカの身体は引き裂かれました―――・・・
その光景を目の当たりにし、まさに声が潰れんばかりに、存在の名を叫ぶ皇女―――
それとは対照的に、高らかなる哄笑で、己の勝利を確信した、蝋白なる美女は―――・・・〕
プ:クハハハ―――ハーッハッハッハッハ!
様はない・・・あたら善に与(くみ)したが故に、存在が低下していたのすら気付かぬとは・・・哀れなるかな、ヱニグマ―――
そこを退(の)くがよい、女禍・・・この者の存在を取りこんだ後は、すぐに汝の番だ―――
ジ:―――誰が退(の)くものか! ヱニグマの・・・いや、私の母であるアヱカの遺志は私が継ぐ!!
そして私が斃れたとしても、タケルや婀娜那さん達が私達の意思をきっと継いでくれる!!
誰も・・・お前には屈したりはしないぞ―――!!
プ:ン・ククク―――なんとも健気なるかな・・・
然(さ)は云えども、汝の力の源泉である「カレイド・クレスト」や「シャクラディア」は、この惑星(ほし)を復活させるのに割いて、以前とは比べ物にならないほど弱体化している・・・。
なにも吾が畏るるに足らぬわ―――さあ、そこを退(の)くがよい!!
ジ:あぐうっ・・・く―――ヱ・・・ヱニグマ・・・
プ:フフフ―――・・・
〔プルミエールは嗤いました・・・
所詮、「善」に鞍替えをした者の末路とは、こんなモノだと―――・・・
また、そうすることにより、存在意義(レゾン・デートル)が著しく損なわれてしまうことに、気付かなかったことの愚かしさに・・・
そして、自分の道を阻もうとするアヱカの遺児に、自分を阻む力さえ残ってはいない―――と、するのですが・・・
斃れたアヱカの存在を取りこむ為、彼女の亡骸に近付いたプルミエールは―――・・・〕
プ:・・・―――ん? こ―――これは!!?
お・・・おのれぇ〜〜―――どこだ!どこに消えおった・・・ヱニグマ!!
ジ:あ・あっ―――灰になった・・・ヱニグマの―――アヱカの亡骸が??
〔その者が待ち望んだ瞬間―――さある者の手によって、存在の意義が書き換えられてしまった自分のオリジナルを、
自分が存在ごと取り込むことによって、また宇宙を恐怖に陥れる事が出来る存在になろうとした・・・
まさにプルミエールが、アヱカの亡骸に触ろうと手を差し伸ばした瞬間に―――アヱカの亡骸は灰となって崩れ去ってしまったのです。
それと共に、プルミエールも・・・そしてジョカリーヌも・・・自分達が幻影を見せられているのだと自覚したのです。〕