<第二十六章;Real Queen>
≪一節;異変≫
〔各戦線において勝利を収めた、マグレヴ・パライソ連合軍は、凱歌と共に意気揚々とアーク・ゼネキスにある宮殿に帰還してきました。
しかし―――タケルや婀娜那だけに拘わらず、パライソの各将達は、ある不安を感じていました。
それも、徐々に玉座の間に近付くにつれ、その不安の色は濃くなっていったのです。
そこで―――ヱリヤとエルムの二人が、先んじて玉座の間に踏み込んでみた処・・・
するとそこには、自分の御業(みわざ)―――とは云え、久しぶりに行使したお陰で、両手と両膝を地面につけ・・・肩で息をするようにしている女皇の姿が―――・・・
いくらジィルガの持つ「ヴァーミリオン」に匹敵する容量を誇っていたとは云え、女禍に敗れたが為にエナジーの大量損失(ロスト)は免れない処となり、
現在でも、残っているとするならば―――本来の容量の10億分の1程度しかなかった・・・
そうした僅かな残りを―――プルミエールは連乱発していたのです。
そのことを、このままではいけない―――と、思ったアヱカは、恥を忍んで宿敵であるジィルガに相談を持ちかけ、予(かね)てより承認された分量だけを使わせてもらうと云う・・・
云わば「お情け」に近い形で、「ヴァーミリオン」経由で「インファナル・アフェア」を行使し、プルミエールを撃退させていたのです。
けれど・・・その代償はあまりに大きかった―――・・・
自分の国の将達が、君主であるアヱカの身を案じ、駆け寄ってきたときには・・・もう―――〕
ヱ:―――陛下! お気を確かに!!
おい―――シュターデン!!
エ:やってるよぉぉ〜〜さっきから―――!
ヱ:ジョカリーヌ様・・・吾らの君主である陛下が、こんなにもダメージを受けているとは・・・
まさか―――プルミエールは、陛下をお護りする私達がいなくなった虚を突いて・・・
ジ:その通りだ―――ヱリヤ・・・
だけど、もう安心していい・・・あの存在―――プルミエールは、アヱカによって光の中へと消えて逝った・・・
ヱ:なんと・・・それでは―――
エ:サーチング・解析・・・共に終了。
お前サマ、ジョカリーヌ様の仰っている事は本当だよ。
つい先ほどまで・・・私達が繰り広げていた以上の闘争を―――この人は・・・
ヱ:なんて無茶な・・・自分で自分を―――・・・
タ:アヱカ様―――!!
婀:姫君―――ご無事にございますか!!
ア:タケル・・・に、婀娜那さ・・ん―――良かった・・・二人とも・・・無―――事・・・
タ:アヱカ様?!
ジ:大丈夫だよ、心配する事はない・・・ただ、一度に膨大で強力な力を解放してしまったから、疲れてしまったんだろう・・・。
今はゆっくりと―――休ませてあげようよ・・・
〔ただ事ではない雰囲気を察したヱリヤとエルムが感じたモノとは、
自分達の戦場より後方にあって、一番に安全だと思われていたこの宮殿に―――
一番好ましくなく・・・一番危険で・・・一番手強い相手が現れ、その者と女皇が生死を掛けて闘(や)り合い、そして勝利したのだと知るに至りました。
そんな彼女達の後に続いて、ずっと以前から懇意にしていた二人の安否を確認すると・・・
女皇は―――アヱカの意識は・・・そのまま混濁してしまったのです。〕