≪二節;真の女皇≫

 

 

〔明けて―――・・・しばらくしてアヱカの意識が元に戻ると、エルムによって呼び寄せられた典医長ヘライトスの呼び掛けもあり、

自分達の君主の安否を確かめようと詰めかける臣下たちが・・・〕

 

 

タ:アヱカ様―――お加減はいかがですか。

ア:随分と眠っていたような気が致します。

  お陰でしばらくは眠たくはありません。

 

エ:そりゃそうだろうさぁ〜―――なんたって、一月(ひとつき)はぐっすりんこだったもんね〜w

ヱ:―――バカ・・・

 

ア:あら―――まあ・・・道理で・・・

  ―――さて、皆さまにはご迷惑をおかけしましたが、もうこの通りわたくしは元気になりました。

  つきましては―――・・・

 

ジ:では・・・アヱカ―――

ア:ええ・・・この国の―――いえ、新たにこの大陸、ランド・マーヴルを統治することになったマグレヴの女王陛下に、挨拶に参ろうと思います。

 

 

〔再びアヱカが目を醒ました時、周囲(まわ)りには自分を心配するいくつもの顔を確認したので、喩え未だ疲労が残ったとしていても、

「大丈夫だ」―――と、自らの弁(ことば)で述べ、エルムのお道化(どけ)た拍子にも、明るい表情を浮かべてみせたのです。

 

そして―――自分の嗣子である皇女の姿を見ると、次に自分が何をすべきなのかを、自身で示して見せたのです。

 

 

アーク・ゼネキス宮殿の玉座には、この度ランド・マーヴルを統一した、

マグレヴ女王・・・ルリ=オクタヴィアヌス=ガーランド―――が、腰を据えていました。

そこへもう一人の女皇・・・今回、滅びに瀕したマグレヴを救うため、虎の子とも云える数々の勇将達をこの地に派遣した、

パライソ女皇・・・アエカ=ラー=ガラドリエル―――が、姿を見せたのです。

 

実は・・・大国の当主である女皇がこの国に来訪していると云う事は、新女王を始め―――この国の大臣・・・果ては国民すら知られていませんでした。

ただその事実を知っていたのは―――次代のパライソの当主となる皇女のみ・・・。

 

それに、マグレヴを非公式に訪れて巡っていたとしても、その格好は庶民と変わらぬモノであり、とてもそんな重要人物だとは思われなかったのです。

 

けれど・・・輝かしいモノを、隠しきろうとしたところで―――隠しきれるモノではない・・・

品位だとか―――人格だとかは、静止したとしても漂ってくるモノ・・・

しかも今は―――・・・

 

誰しもがそうであると判るような、煌(きら)びやかさ―――豪華さを身に纏い、まさにこの世の太陽が地上に降臨したかとさえ錯覚させるような、

そんな威厳と輝きを持ち、パライソ女皇アヱカは、そこに佇んでいたのです。

 

その圧倒的な存在感に、マグレヴの官達は息を呑むしか有りませんでした・・・

それに―――彼(か)のお方の偉大さは、それだけには留まらず―――・・・〕

 

 

ル:アヱカ・・・女皇陛下―――この度は遠路遥々(はるばる)、よくぞお越し下さいました。

  そして、あなた様の慈悲深さに感謝致す次第にございます―――つきましては・・・

ア:この度はおめでとうにございます。

  わたくしの国も、あなた方の国と友好関係を結べます事を、大変な喜びに打ち奮えている次第にございます。

  されど―――あなた方の国は、現在に至るまで大変なご不興を被(こうむ)られてきました。

  そこでわたくしから提案させて頂くに・・・この地には、いかばかりかの臣下を残したく存じています。

 

ル:え・・・っ―――あの・・・女皇様?

ア:―――なんでしょう、ルリ女王陛下・・・

 

ル:あ・・・あの―――私達の国と・・・

ア:然様にございます。

  それにわたくし達は、あなた方の国を属国化にする為に、この地に赴いたわけではございません。

  更に申し述べますのには、この地に残しおく臣下の筆頭に、我が娘であり次期パライソの皇位継承者である、皇女ジョカリーヌ=サガルマータ=ガラドリエルを据え置きます事を、

  なにとぞ・・・よしなに―――

 

ル:お・・・皇女様を―――畏まりました、アヱカ女皇様達(たっ)ての願いとあらば、私どもの方も、よろしくお取り扱いさせていただく所存にございます・・・。

 

 

〔両君主のこの訓示により、パライソとマグレヴは、この先変わらぬ友好関係を結んでいくことを明言しました。

 

とは云っても・・・今回、敵国を圧倒的な戦力・武力で退けたパライソ軍―――その規模だけを見ても、遥かにマグレヴより国力を有している事が判るのですが・・・

その国の当主であるアヱカは、自らの口でマグレヴを属国とするような意思は見せず、それどころか対等な関係を築こうとすらしていたのです。

 

そんな事は・・・本来からすれば常識的には考えられませんでした。

国力も十分にある強き国が、今にも潰れそうだった弱き国と―――「対等な関係」などと・・・

しかも、自分の娘をこの国に置くと云う、一つ見解を間違わせてしまうと「人質」にも間違われるようなことに、

アヱカの胸中がいかばかりのモノであったかを、汲み取ることが出来るのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

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