≪二節;突然の報(しら)せ≫

 

 

〔それはそれとして―――・・・

パライソに帰国してきたジョカリーヌは、現在この国が、ある不安を抱えている事を知るのでした。〕

 

 

ジ:ただいま―――(ん?)どうしたの・・・皆。

官:ああ・・・皇女様―――いえ・・・その、大変なんです! あなた様のお母上である女皇陛下が・・・

 

ジ:えっ―――アヱカが?!

 

 

〔それは・・・皇女の母である女皇・アヱカが、ここ二・三日前から病床に就いている・・・と、云う事でした。

 

日頃の過労か―――それとも10年前の戦役の疲れが、今頃になって襲ったのか・・・

それは、ジョカリーヌでさえ知り得ることはできませんでした。

 

ただ―――明らかな現実として、アヱカは病に倒れ・・・病の床に臥していると云う事だけ・・・

その事を官の一人から聞くと、すぐに女皇の部屋へと足を向かわせるジョカリーヌ・・・

 

そして彼女の見たモノとは―――〕

 

 

ジ:―――アヱカ! あっ・・・ヘライトスにソシアル・・・

ソ:皇女様・・・いつお戻りになられたのですか―――

 

ジ:・・・それより、母は―――アヱカは大丈夫なのか・・・

ヘ:はい・・・今、安静になられたばかりです。

 

ジ:そうか―――・・・それで、一体いつからなんだ・・・

ヘ:―――は?

 

ジ:一体いつからなんだ、アヱカがこんなになってしまったのは!

ヘ:・・・女禍様、非常に申し上げにくい事なのですが―――10年前のあの戦いで・・・もうすでに、この方の身体は疲弊しきっていたのです。

  そうなる事を承知で、この方はもう一人の自分と対峙なされた・・・そのお陰で「リヴァイアサン」の容量は底を尽いてしまった―――

  私達からしてみれば、今の今・・・この方がこうして生きている事自体奇跡なのです!

 

 

〔こんなにも窶(やつ)れ・・・あんなにも美しかった菫紫(きんし)色の髪が、色褪せて薄くなってしまっている・・・。

それに色艶もなくなり、髪の乱れからも判るように、病と闘っていた事が好く判る・・・。

どうして―――こんなになるまで・・・判らなかったのだろう。

 

自分が別の処で楽をしていていた頃、この人は自分の生命が消え逝く恐怖と闘っていた・・・

それでも自分は、自分の相互協賛者(アレロパシー)であり、宿敵であり・・・そして戦友に、何もしてやる事が出来ない。

いや・・・何かをしてあげたいのだけれども、「カレイド・クレスト」や「シャクラディア」とはリンクすらしていない今の自分にとって、何が出来ると云うのだろう・・・

 

あれから10年―――たった10年しか経っていないはずなのに、アヱカの姿は往時の見る影すらなく・・・

痩せ衰え―――実際の年齢よりも、老けこんでいるように見えました。

 

それに、優れた科学技術者であり、医師でもある者からは、聞けば胸が痛くなるようなことばかり・・・

 

アヱカは―――ヱニグマは―――もう一人の自分と云って過言ではないプルミエールと対峙して、彼(か)の存在を折伏させる時、「全身全霊」を持って行ったと云う・・・

そう・・・「全身全霊」―――

それは、言葉だけの装飾ではなく、まさに自分の存亡をかけての、一世一代の闘争であった事を物語っていたのです。

 

そして文字通り、アヱカの力の源泉であった「リヴァイアサン」の容量は底を尽き、いつ自分が死ぬともしれない恐怖に戦慄(おのの)いていた事を、

科学技術者であり医師の言葉からようやく理解したのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

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