≪四節;訪問者≫
〔すると、こんな怪奇現象の興奮冷めやらぬ時に、この国はある一人の人物の訪問を受けていたのです。
その人物と云うのも―――・・・〕
葵:むっ―――何者だ、そなたは・・
茜:今は緊急の事態ゆえ、部外者は入室罷(まか)りならぬ!
?:ほう・・・だとしたら、部内者であればよろしいと云うのですな―――
結構、ならば私はその条件は満たされている・・・そこをどきたまえ。
〔女皇が危篤中であることは、親衛隊の葵や茜も知っていました。
だから、この時機の不審な人物の訪問は受け付けなかったのです。
けれど、この彼方の人物は、「部内者」であることの条件を満たしているとし、女皇の部屋の扉を護る親衛隊を説得しようとしていたのです。
それにしても・・・「部内者であることの条件を満たしている」―――・・・
葵も茜も、パライソの官の内(なか)に、こうした人物がいることすら知りませんでした。
それもそのはず―――確かにこの人物は、パライソの将官ではないけれども、「部内者」であることに間違いはなかったのです。
それと云うのも―――・・・〕
ジ:―――うん? 誰・・・
ああっ―――お前は!!
べ:我が創主からの言伝(ことづて)、お伝えに上がりました・・・
〔近親の人間が亡くなったと云うのに、一体何者が訪問したのだろう―――と、そちらに目を向けてみると、
そこにいたのは、ガラティアの助手であるベェンダーなのでした。
そして、この思いも由(よ)らない者の訪問を受け、ジョカリーヌは朧げながらも、ある事が判ってくるのでした。〕
ジ:ベェンダー・・・もしかすると、お前がここに来ていると云うのは―――
べ:もうすでにお察しであれば、私とて無駄な説明も省けようと云うモノ。
まさにその通りです―――ですが、本当に「リヴァイアサン」の容量は、あの戦いで尽きてしまっていたのです。
ではなぜ―――今まであの者が生き永らえていたのでしょうか・・・
聡明なあなた様なら、すぐに判る筈です。
ジ:ガラティア姉さんの・・・「ユニバース」―――! すると・・・では・・・
べ:フフッ・・・こちらを再生してご覧になって下さい。
それにより、今後あなた様が成さねばならない、次段階の方針が定められているはずです。
〔「総てを識(し)りし者」―――死せる賢者・・・リッチー・ガラティアの使者であるベェンダーが齎(もたら)したモノとは、
たった今・・・光の内(なか)に消え去ったアヱカの肉体に魂―――
その事の総ては、ガラティアの仕業であり、それと同時にアヱカと云う存在は、本当にいなくなったのではない・・・と、云う事を意味するモノだったのです。〕