<第三章;受 胎>
≪一節;彼方にて観ていた存在≫
〔女皇・アヱカらしき存在が、婀陀那とタケルの居住に不意に姿を現わせ、そして何かを成し遂げようとした、その本来の目的とは・・・
その夜、婀陀那とタケルが愛し合った―――「結果」そのものだったのです。
そして、時間凍結の効力の喪失と共に、まるで消えるようにして去った発光体・・・
そこには、当然のことながら、不自然な形の寝返りを打つ妻と、その時にはそんなことがあったことすら知らないように寝付く夫―――・・・
・・・と、その他に―――
実は、そのアヱカらしき発光体が、この不徳とも思える行動をとっていたことの一部始終を―――
同じ建物内部にて、また別の存在が同時刻に観ていたのです。
その別の存在とは―――・・・〕
エ:ああっ―――あ・あ・あ〜〜・・・
と、とんでもないもの観ちゃったよぉぉ〜〜―――
大:ふうむ―――中々面白いことをしてくれる・・・
エ:あのぉ〜〜―――お父様??
大:フン―――今朝方の朝議で少しばかり違和を感じ、この場所にて張っていた甲斐があったというものだ。
エ:あ・・・いや―――そうじゃなくてぇ〜〜〜!!
あれ・・・って、今の女皇様じゃ〜〜―――・・・
大:フフ・・・だからこそ面白かろう―――
「自分」という肉体(うつわ)を離れ、何をしでかすのかと思っていたが・・・な。
〔あの―――アヱカと思われる発光体にすら感づかれる事なく・・・
また、その存在の作り出した「場所限定の時間凍結」の結界内にも入ることなく、その場に介在した存在・・・。
彼らこそ、件(くだん)の朝議のあと、人知れることなく行方を晦ませていた、
御史大夫のエルム―――と、彼女の父である「大公爵・エルムドア=マグラ=ヴァルドノフスク」・・・
この―――官の内に叛意ある者がいるかいないか・・・を見定める官職の者が、
なんと疑いをかけていたのは、パライソ国女皇・アヱカ・・・に、だったのです。
ですがしかし―――官の一人が、女皇に疑いをかけて大丈夫なのでしょうか・・・
イヤ、それ以上に、女皇アヱカに疑いをかけていたというのも―――・・・
それから程なくして―――起床をしたタケルは、どう見ても不自然な寝返りをして寝付いている妻を起こし、
どうしてそうなっているのか―――の事由を質してはみるのですが・・・
婀陀那のほうもどうしてか自分がこんな体勢で寝付いてしまっているのか、疑問に思っていたのです。
そう・・・彼女は、自分の身に起こったことなど、覚えてはいなかったのです―――・・・。〕