≪四節;叶わなかった願いを―――≫

 

 

〔その場所は―――その昔、何かを研究していた施設のようでした・・・。

それは使われていない今でも、その名残は確認されていました。

 

けれども――― 一番に不可解なのは、この施設の厳重な封印を破り、この施設の機能を再び甦らせた存在のこと・・・。

 

その存在は―――この施設が、何のために活用されていたのかをさも知るが如くに、眠っていた機能の数々を甦らせていきました。

 

そして自身―――こう呟くのです・・・

 

 

――さあ・・・永劫悠久なる時の狭間より お目覚めなさい・・・――

――そして・・・遥かなる過去に叶わなかった願いを 成就して差し上げるのです・・・――

 

 

たまたまの「偶然」か―――それともやはりの「必然」か―――・・・

その存在は、「古(いにし)えの皇」と一つの肉体を共有した事により、かの方が過去において成する事のできなかった願望の一つを知るに至った・・・

 

「古(いにし)えの皇」の―――叶わなかった願い・・・

 

その・・・叶わなかった願いと、自身のレゾンデートルを、遙けき過去―――自分が何者であったか・・・の、記憶を総て甦らせた・・・。

 

総てにおいて「性悪」だった自分自身を、「性善」の極みに転化させてくれた・・・

元は相反する女禍に感謝をするつもりで、今回のこの行動に至った―――・・・

 

そして、この施設の中でもさらに特異な場所を稼動させた・・・その時―――〕

 

 

大:そこまでだ―――

 

ア:・・・何用でしょう―――大公爵・・・

  いえ、ここは昔通りこう呼んだほうがよろしいのでしょうね。

エルムドア=マグラ=ヴァルドノフスク

 

エ:こ・・・この人〜〜―――お父様の名前を・・・

 

大:フン―――別に驚くほどの事でもない。

  余も汝のことをよく知り、また汝も余のことをよく知る・・・

  なぜならば―――かつてこの者は、遙けき過去において、余と、ラゼッタと、女禍と、マエストロと、プロフェッサーを向こうに回し、互いに争い合っていたのだから・・・

 

なあ―――そうだろう・・・

 

         

 

エ:え・・・ヱニグマ?? でも、そんな人―――

 

ア:ウフフフ―――・・・懐かしい響き・・・

  でもね、大公爵―――わたくしはもう、「純然たる悪意を持つ誰でもない者」ではないのですよ。

 

  あんなにまで・・・虚しい存在だったこのわたくしを―――アヱカという存在にしてくれた方・・・

  だから、そのお礼として、あの方が過去において叶わなかったある願いを・・・

 

 

〔この施設の中でもさらに特異な場所―――それは「培養槽」と云っても過言ではない装置が床から浮上してきた時、

待った―――をかけた者達・・・

 

すると、その者達の中でこの存在の事を一番によく知る者から、元はアヱカらしき存在が何者かであったのかを暴いたのです。

 

それこそは―――「純然たる悪意を持つ誰でもない者」・・・ヱニグマ―――

 

けれども、自分の正体を暴かれた存在は、別段うろたえる様子も見せず、

ただ―――そっ・・・と否定をしたのです。

 

かつては、総てを否定し・・・偏った美意識の中で存在の意義を紡ぎだしていた自分―――

それが・・・あんなにまで虚しかったモノを、今「わたくし」が「わたくし」であることが出来ているのは、

総てにおいて「性善」であった女禍が、自分を包みこんでくれたお陰・・・で、あると―――

 

 

そう、今回の一連の騒動というのは、元は「ヱニグマ」と呼ばれた者が、

救ってくれた女禍に感謝をするべく、取った行動に他ならなかったのです。〕

 

――するとその時――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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