≪四節;行き着く果てに見える真実≫
〔あんな・・・穢れた、唾棄すべき存在が、裏の世界があろうことなど露ほども知らなさそうな女皇陛下と、同一視されることを嫌ったヱリヤは、
自らのグノーシス<プロミネンス>に備わる、「真実を照らす焔」により、アヱカの身の潔白を証明しようとしたのです・・・・が―――〕
ア:ありがとう・・・ヱリヤ―――
でもね、大公爵の云っていることは本当なのですよ・・・。
ヱ:な・・・に―――・・・
陛下! あなたまでおかしなことを・・・!!
ア:・・・わたくしは―――確かに以前まで「ブラックウィドウ」という、宇宙でも名の通っていた邪(よこしま)なる組織の頂点に立っていました。
このことは、あなたが信じようと信じまいと、確実にあった事実なのです。
ヱ:そ―――そん・・・な・・・
ア:それに・・・あなたのお母上と女禍には、ある時期に大変申し訳ないことをなしてしまった・・・
その償いを、今こうしてやっているものと思ってください。
ヱ:なぜ―――なぜなんだ!!
ア:わたくしが、過去に敗れ・・・また今般、女禍の手助けをしようとしている・・・
その一つの要因に、女禍も興味を示した彼ら―――「人間」があるのです。
ヱ:人間・・・? ヒューマン―――・・・
〔そう―――「人間」・・・人間とは、斯くも弱く穢れた存在・・・
誘惑の言葉に靡(なび)き―――慾望に屈する・・・
他人より楽をしたい・・・得をしたい―――
羨ましがられたい・・・浪費をしたい・・・より多くの悦楽を愉しみたい―――
他人を思い通りに支配し・・・自分を讃えさせたい―――
神に祈りながら・・・彼らは 神を信じない―――
愛しあいながら・・・彼らは 憎しみ―――
平和を求めながら・・・彼らは 殺しあう―――
親子で 夫婦で 兄弟で―――・・・
だからこそ、わたくしは、ありとあらゆる甘言・誘惑をして、人間たちを堕落せしめんとし向けた・・・
そうすれば、彼らを庇護する女禍も、そのうちに諦め―――
この美しい天体は、一朝一夕にわたくしのものになる・・・そう信じていた―――
けれども・・・「人間」は強かった―――女禍は、そのことを心得ていたのです。
誰に教わるでもなく、おそらくあの方の本能で判っていたのでしょう・・・
彼らが、どんなに慾の蜜漬けになろうとも、快楽の淵に溺れようとも・・・
真にはそうならない―――と、云うことを。
その輝きを見せられたとき・・・わたくしの敗北は決定されていたのです―――
嗚呼―――なんと素敵なるかな・・・「人間」・・・
ならば・・・わたくしも―――
ヱニグマは、自身が敗れその存在が潰える瞬間、熾緋の髪をした=神=と、ある誓約を取り交わしていました・・・
この次に・・・自身が生を享(う)け賜ったときには、穢れを持たない一箇の人間に・・・
それと、もしよろしければ、この素晴らしきことを自身に判らせてくれた存在と、一緒のときを刻ませてもらえないだろうか・・・と―――
そのとき、ヱリヤはとても不思議なものを見ていました・・・
自分の盟主である女禍が、その真のチカラの解放を試みたときに見える「翼」―――・・・
その「翼」が、今の女皇陛下にも備わっている・・・と―――
それこそが・・・穢れを祓った「証(あか)し」―――で、ある・・・と。〕