<第五章;統一 ―――その後>
≪一節;最終決戦前夜≫
〔「女皇懐妊・出産」の吉報は瞬く間に国中に広まり、老若男女を問わず皆歓喜に沸いたものでした。
けれども、国策としての重要事項は放置されたままではなく、民衆が歓喜に沸く中でも然るべくの措置について話し合わなければならないのです。
そして、女皇が出産から体調を元に戻したと云う事で、改めて女皇を交えた上での朝議が行われ、
最終的に残された課題―――カルマ平定を成し得るべく、万全の体制で臨まれたのです。
かくして―――その後も快進撃を続けたパライソ軍は、難攻不落と謳われた二大要塞『ジュデッカ』と『マディアノ』を陥落させると、
眼下には・・・カルマの本拠、コキュートス城をすでに視野に捉えていたのです。
・・・が―――しかし・・・〕
イ:これでいよいよ―――カルマもあと少し・・・と、云うわけですね。
セ:そうね―――けれども油断は禁物だわ。
リ:ええ・・・第一、まだ向こうには三傑の一人と総大将のサウロンが残っている・・・
ノ:全く以って―――中々厄介なのが残った・・・と、すべきところかな。
チ:そうですね・・・ですが、兄上ならば何か良策などを秘めておいでになるのでは―――
〔敵の本拠を見据え―――残存勢力も僅かとなってきた・・・
けれども、その残りの敵将が最難敵であることを、パライソの将たちはひしと感じていました。
今までに斃してきたカルマ七魔将―――その中でも最凶の実力を誇ると云われる「三傑」・・・
その内の一角が崩された今となっても、残されている一人こそは最上級の実力を持っていることから、
並みならぬ策略を持ってしなければ討ち倒すことは難しい―――と、感じていたのです。
そして・・・天幕内に、大将軍の婀陀那と元帥のタケルの二人が入り、定位置に着席したことでコキュートス城を陥とすための作戦会議が始められ・・・〕
タ:さて―――いよいよカルマ攻略も、あの城を陥落(おと)すのみ・・・と、なりましたが、いかがいたしましょうかな。
婀:ヱリヤ様にエルム様、過去にはどのように―――・・・
エ:攻略―――って云ったってね、以前にも云ったように、あのときのヤツらはヤツら自身じゃなかったのさ。
しかも、サウロンてのは七魔将の比じゃない、その上魔将筆頭のビューネイも残っていることだしね。
リ:そんな・・・それじゃ、いくらジュデッカとマディアノを陥落(おと)したと云っても・・・
エ:リリアちゃん、そいつは自分たちを過小評価しすぎってもんだ。
私が云いたかったのは、コキュートス―――さらには魔皇たちを討つのが、それほど容易(たやす)くない・・・って、云っているんだよ。
〔「本篇」で見られたように、カルマ平定戦―――主にしてカルマのコキュートス城攻略などは、
まさに文字通り、両軍ともに死力を尽くしての・・・まさに血みどろの戦いとなったのです。
それにこのときの戦いは、エルムの予見通り、誰しもが経験したこともなかった苦しい戦い・・・
敵の強さのみに梃子摺ると云ったような・・・そんな生易しいものではなく、意外な者達との戦い・・・
自分の母だとか―――かつては思いを寄せていた方だとか・・・
そう云った意味での、ある意味苦しい戦い・・・
この苦しい戦いの行く末に、彼らの見たモノとは―――・・・一体なんだったのでしょうか。〕