≪四節;煙に撒かれる≫

 

 

〔そう・・・紛れもなく女皇の寝所に現れていたのはマエストロ・デルフィーネなのでしたが、

そこでジィルガはアヱカに何事かを教えられると、また別のどこかへと転移してしまったのです。

 

それからののち―――女皇の寝所に大挙してなだれ込んだのは、ゼシカでありエルムであり―――そしてまた葵であり茜であったのです。〕

 

 

ア:・・・あら、どうされたというのです―――あなたたち。

 

ゼ:あっ・・・陛下―――

エ:・・・・すでにお起きになられていた―――というのは、もしかすると外での騒動を感じたからなので?

 

ア:いいえ―――少し前から目が覚めて、そこで少し考え事をしておりましたの・・・。

 

ゼ:あのっ―――・・・

エ:そぉ〜だったのかい―――私ゃまた、ゼシカと葵と茜がこの入り口で云い合いをしてたから、それで目が覚めちまったものかと思っていたよ。

  ところで〜〜―――・・・和子様である皇女様はどこへ行ったんだろうかねぇ?

 

ア:え? あっ・・・もういなくなってる―――そう云えば昨日・・・墓苑の方へ行くと云っていましたが・・・

 

葵:えっ? ジョカリーヌ皇女様が部屋を出られていると云うのですか??

茜:そんな・・・我らはずっとここにいて―――目を離すことなどありませんでしたのに・・・

 

エ:ヤ〜レヤレ―――・・・なにも正面である入り口の扉でなくったって、部屋の窓から〜ってことも考えられるだろ?

  しかしまあ〜―――お転婆に育っちゃったこと・・・一体誰に似たんだろうかねぇ〜?w

 

ア:わっ―――わたくしは違いますよ? わたくしはちゃんと節度ある躾を・・・

  それに、わたくしの幼少の砌(みぎり)には、まるで借りてきた仔猫のようだと―――・・・

エ:ほぉ〜ん? なんだか随分と苦し紛れに聞こえるんだけど・・・ほんとなのかねぇ〜〜―――

 

ア:ちっ―――違いますうっ! わたくしは決して・・・田圃(たんぼ)の畦道(あぜみち)を、蝶を捕まえるのに夢中になり過ぎて・・・

  それで足を踏み外して肥え溜に落ちてしまったことなんて―――絶対に・・・絶対にないんですからぁっ!!

 

葵:―――・・・。

茜:―――・・・。

ゼ:―――・・・。

 

エ:・・・あ〜んれま―――なんだか余計なことを聞いちまったようだねぇ〜・・・

 

ア:お・・・お願いですから〜―――今の話は聞かなかったことに〜・・・

 

エ:そぉ〜ゆうことだよ―――判ってるね?お前たち・・・

葵:え? あ、は・・・はい―――

茜:い・・・今の話は聞いておりませんでしたっ―――!!

ゼ:み・・・右に同じくです―――

 

エ:よぉ〜し―――それでは解散! 自分の持ち場に着くように。

 

 

〔そこにはちょっとした・・・思わぬ展開がありました。

初めのうちは床(とこ)から半身だけを起こして、矢継ぎ早に入室してきた臣下達を相手としていたのですが・・・

それがいつの間にか、女皇幼少期にあった唯一の汚点とも云えるべき出来事の暴露となってしまい、

そのことを不可抗力で聞いてしまった臣下達は呆気にとられ、丁度その場にいた御史大夫によりプチ緘口令が敷かれたのです。

 

 

ところで・・・不思議に思いませんでしょうか―――?

いづれにしろアヱカは、この部屋に不法侵入者があったことを、自分の失敗談によって有耶無耶(うやむや)にしてしまったことを・・・

 

そう・・・どうであれ、アヱカはジィルガを庇ってやっていたのです。

 

けれど・・・ジィルガが来ていたことを察したのかどうなのか―――

葵や茜・・・ゼシカが同時に退室した後でも、なぜかエルムはその場から離れようとはしませんでした。

そして―――・・・〕

 

 

エ:お見事―――w あの子たちがこの部屋に入ってきた本来の目的を逆手にとって、まんまと場を濁しちまったね。

  ま・・・私にしてみれば、そんな創り話―――ど〜でもいいことなんだけど・・・

 

ア:あらw わたくしは創り話をした覚えなどないのですが―――

 

エ:おやおや―――それじゃ本当のことだったのかい?w

  まあ〜それはいいとしてぇ〜―――・・・あの方にお師様は、そこにいるんだね・・・

 

 

〔その事実を知ると、エルムは・・・皇女ジョカリーヌと同じ手法―――空間転移を使って女皇寝所から掻き消えたのでした。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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