≪五節;墓苑にて―――≫

 

 

〔それはそうと―――エルムとアヱカの会話中に出てきた皇女ジョカリーヌの行き先・・・

パライソ国の礎ともなった、旧・フ国の王族専用の墓苑に―――・・・〕

 

 

ジ:(ジョカリーヌ=サガルマータ=ガラドリエル;齢(よわい)四歳にしてパライソ国の次代を担うことを約束されたアヱカの嗣子。

  而してその実態とは、第二部のお話しの冒頭にでもあったように、女禍の生殖器を使って産まれた女禍自身であるとも云える。)

  (フ国王・・・そしてヒョウ殿―――私は今申し訳ない気持ちで一杯だ・・・

  あなた方の国で、他人同然の私が居座ってしまって―――しかも、あたかも私がその家の主人のように振舞ってしまうなんて・・・

  こんな・・・恥知らずな私を―――どうか赦してもらえぬものだろうか・・・)

 

 

〔旧・フ国王族の墓苑に――― 一人の供もつけずに参っていたのは、

このほどガルヴァディア大陸を名実ともに統一したパライソ国の、実質上の跡継ぎである皇女ジョカリーヌなのでした。

 

けれどもこの皇女なる存在は、元はアヱカの身体を・・・アヱカの魂と共有していた―――「古(いにし)えの皇女禍の魂」そのものでもあったのです。

 

それが今―――それぞれの肉体にそれぞれの魂が宿っていると云う事は・・・

そう云う事が出来たモノの発端は、第二部であるこのお話しの初頭でのあの場面―――・・・

不詳である存在・・・アヱカの手によって、女禍が過去に封印をしたはずのラボにて、女禍の生殖器に人工授精をしたこと―――

その甲斐あってか、無事女皇アヱカは皇女ジョカリーヌを出産し、国家のさらなる安泰化を目指していたのです。

 

それから年月が経ち―――物事の分別のつくようになった皇女は、こうして旧王族のお墓参りに来ていると云う事だったのです。

そうしたところ―――・・・〕

 

 

誰:・・・皇女様―――?

 

ジ:あ・・・っ、リジュ―――に・・・ホウ様?!

 

ホ:(ホウ;世が世ならば、一国の王であった人物―――元はと云えば、アヱカはこの人物から禅譲を受けた。)

  私の父と兄の・・・菩提を弔ってくれていたと云うのですね―――女禍様・・・

 

ジ:・・・申し訳ない―――本来ならば、あなた方が玉座に上らなければいけないものを・・・

  それを、他人と云って差し支えのない私たちが簒奪をしてしまって―――・・・

  嗚呼―――本当は、どの面を下げてあなた達に会ってよいやらも判らないのに・・・それでもあなた方は、私を赦してくだされるのか?

 

 

リ:(リジュ;元フ国王后であり、ホウの実母―――実は以前にはアヱカに辛く当たっていた経歴がある。)

  いえ・・・古(いにし)えの皇よ―――そこは思い違いというものです。

  何よりもあの頃は混沌としていました―――このことはあの人も・・・太子様もそうお感じであったことに違いはないでしょう。

  ですから・・・もうお顔を上げてください―――丁度わが子のホウも、元服を迎えてパライソ国の官の一人となったところなのです。

  それに、今日はそのことのご報告も兼ねて―――・・・

 

ジ:ホウ様が元服を―――? それはおめでとう・・・

 

ホ:いえ―――小さかったあの頃、太傅様やあなた様に教えられたことは、今の私にとっては何よりの宝物です。

  これからは私も、農政務官の一人としてこの国・・・いえ、この美しき惑星の再生に尽力したいと思います。

 

ジ:うん・・・それを聞くと安心するよ―――君みたいな若い世代がそのことに目覚めてくれると、この惑星の再生も・・・わづかながら早まっていくことだろう―――

 

 

〔実はこの時――― 一組の親子が、この墓苑に参拝をしていたのでした。

それは・・・この国がパライソと改めなければ、フ国の王として君臨していたホウ―――と、その母であるリジュなのでした。

 

この親子は、フ国がパライソ国に代わる際、ご本人達の告解をもって、アヱカの内に宿る存在が「古(いにし)えの皇」である女禍であることを知らされていました。

それと同時に、ホウが幼かった頃、色々な物の理を享受してくれたのも、女禍の影響が大きかったことを知ったものだったのです。

 

―――だとしても、女禍にはある後ろめたいことが・・・

どう云った象(かたち)であれ、王という地位をホウから剥奪したことを悔やんでいた面も少なからずあった―――・・・

けれどもそこを、ホウやリジュは責めたりはしなかったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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