≪三節;ものの理(ことわり)を料(はか)ること―――@≫
〔その男は―――軽やかな手つきで次々と注文の品を仕上げていきました。〕
ヤ:お〜い兄ちゃん―――冷やし中華あと五人前ぇ追加ぁ〜!
誰;フッ・・・お安いご用です―――
〔その巨体に似合わず、軽やかなる庖丁捌き―――無理とも云えるような客からの注文でも卒なくこなし、
まさに生粋の庖丁人であると呼べる 庖丁の線 の確かさで、数々の一品を仕上げていく料理人・・・
しかも、見た目もクールさが入り・・・フェロモンも垂れ流し〜―――と、くれば、
道行く人もパライソの女官たちも、足を店の前で止めざるを得なくなり―――結果ご来店・・・と、なっていたようです。
それにしても・・・数多の女性の視線をくぎ付けにさせる、女性キラーなこの巨漢の正体とは・・・?
その男は、復活を果たしたのち・・・やはりある方に目通りをするべく時期を窺っていました。
しかし―――創主の癖もあってか、放浪癖もなくはなく・・・取るものもとりあえず、この国の国営食堂に足を向かわせていたのです。
これはその時の一幕―――・・・
腹が減っては何とやら―――と云う事のようで、席について一品頼んだところ・・・〕
誰:―――ん?
・・・すまないが、これを作った料理人は誰なのかな―――
ヤ:あ? オレだが・・・それがどうかしたのかい――― えぃ、らっしゃい〜!
誰:いや、別にどうと云う事はないのだが・・・少々気になってね。
ヤ:はぁ〜〜まさかあんた、ひやかしじゃねぇだろうな。
だったら、お代はいらねぇから、とっとと帰ってくんな―――!
誰:ほぅ・・・これはこれは―――私はただあなたのためを思って云ってやっていることなのだが・・・
はっきりと云わせて頂こう・・・この料理は死んでいる!
ヤ:な―――なんだとぉう? 手前ェこの野郎・・・云いたいことを云いやがって!
誰:フム・・・自分の作ったモノを揶揄されると憤慨する―――と、云う事は、まだ見込みがありそうですね・・・
それに―――丁度今の時間帯は込み合い時・・・ともなれば、致し方のないこと―――
ですが・・・それは理由の一つとしても成り立ちません、況してや「庖丁の線」の不確かな、こんな料理ではね!!
ヤ:うぅっ―――・・・(な、ナニモンだ?こいつ・・・)
客:おぉ〜い―――ヤノーピルさんよ、こっちのチャーハンまだなのかい!?
ヤ:ああっ―――すいやせん、今すぐに・・・
誰:フム・・・一人で切り盛りするのが大変だと云うのなら、不肖の私めが手を貸してやらないでもないが―――
〔時間は丁度お昼時・・・と、云う事もあってか、食堂内は煩雑しており・・・手を抜かない―――までも、それ同然のモノを出された時に、
その巨漢は、思わずも出された料理に対しクレームをつけてしまったのです。
するとこれに対し、この食堂の首席料理人でもあったレイヴンのヤノーピルは、
この煩雑時に文句をつけられるのは妥当ではないとし、その巨漢と少し小競り合ってしまったのです。
けれども他の常連客からすれば、注文しているのにも拘らず出されないモノに対し、催促の声が・・・
それを見た巨漢―――ベェンダーは、止むを得ないこととしてヤノーピルの手伝いをすることを買って出たのでした。〕