≪三節;一つの意志の下に≫
〔こうしてそのまま、各自揃って女皇の部屋に足を向かわせたところ・・・〕
ア:―――あら、ようやくいらしたようですよ。
ジ:あの・・・母上、実は―――
ア:ええ、先ほどこちらに来られた方から事情の方はよく聞いております。
ジ:(あ゛〜〜・・・)ジィルガ姉さん―――・・・
ガ:〜ったく、どこに逃げやがったのかと思ってたら、こんなところに匿(かくま)われてたのかい。
デ:だってぇ〜お姉様ったら私が下戸なの知ってても、無理やり飲ませたりするんですもん〜。
〔まるで自分たちがここに来るのを待っていたか―――と、云うような態度でアヱカは出迎えたものでした。
けれどもそれは、自分の身の危険を感じ取ってここにエスケープしてきたジィルガが白状したようで、
ガラティアも密告(ちく)ったジィルガをひと睨みする場面もあったりはしたのですが、
今は取り分け、争いを好まず―――避けて通るこの方からは・・・〕
ア:まあまあ―――ようやくご姉妹がお揃いになられたことですし、せめてわたくしの前では仲良くされてくださいまし。
デ:ほ〜ンと・・・こいつ、あのいやぁな女だったとは思えないくらい清純で爽やかになってるわよね。
ジ:(そぉゆう姉さんは、なんだか悪人そのままだよ―――)
ガ:デルフィーネ・・・あんたそんなこと云ってたら悪人そのままだよ。
デ:お姉ぇ〜様?? ちょっと―――そんな言い方あんまりじゃござんせェン?
ガ:―――と、女禍ちゃんが心の底で云ってましたぁ〜♪
ジ:・・・って、ガラティア姉さん?? な、な、な・・・なんてことを云い出したりするんですか!?
デ:女禍ちゃんしどぉ〜い! 実の姉であるこの私より、こんなヤツの肩を持つというのね?
いいわ―――死んでやる!死んでやるんだから!!
・・・と、止めるなら今よ―――いいの?私が死んでも!!
ガ:いやぁ、誰も止めに入りゃしないから―――安心して死になよ。
今だったらサービスで骨だけは拾ってあげるよン♪
デ:お姉様の莫迦ぁ〜〜! ほんとに死んでやるんだからぁ〜!
ジ:(あ゛〜〜なんだかとってもややこしいことに―――それにしても、どうして私ばかりが貧乏くじかなぁ〜・・・)
ジィルガ姉さん―――気を取り直して・・・今のは私の失言だったよ。
それに、ガラティア姉さん―――ジィルガ姉さんを煽っちゃダメだよ・・・せっかく私たち三姉妹が揃ったというのにさ、
これではタケル達に示しと云うものが―――・・・
ア:ウフフフ・・・こうして見てても中々飽きさせないでしょう。
本来ならばこの方達はこんなにも仲が良く陽気なのです。
それを―――・・・今回ばかりは敵対することとなってしまって・・・まさに皮肉そのモノと申しましょうか。
〔女皇は―――遠い遙けき過去に、三姉妹に抗ったことのある存在は知っていました。
この三姉妹の仲睦まじさを―――・・・
それが―――今回の因(もと)となったことも、元はと云えば自分が蒔いた種であったことを、今更ながらに悔いていたのです。
それに・・・二人の姉が取った行動―――悪しき因(もと)の種を、その根底からなくするべく、悪しき芽の一部となって根から腐らせる法・・・
この二人の姉は、愛する末の妹のために、どんなにか自分の心を殺してきたことだろう・・・
それが喩え、策略と云う名の下によって敵側に与(くみ)することとなろうとも―――・・・
つまりは、女皇アヱカは、そのことを踏まえていた上でモノを申し上げていたのです。〕