≪四節;動き始めたある集団≫
〔それはそれとして―――今では古き記憶を甦らせて、よりガラティアに近しくなったお方の云われるには・・・〕
ア:ところで・・・あの方々はお見えになっておられないようですね。
タ:あの―――方々・・・?
ガ:もうそろそろ・・・来る頃合いだよ、時間的にも、ね。
婀:―――なんのことを云っておられるのです? 今回集まりおいたのはあなた方が・・・
それに、面子だけを見てもこれ以上の者は―――・・・
デ:・・・まさかお姉様が云っておられるのは―――
ジ:(そう云う事か―――・・・)
〔今回女皇の部屋に集まった面子を見ても、錚々(そうそう)たる顔ぶれ―――だとも思えるのに、
アヱカからはまだどこか物足りない・・・いや、今回の主役となるべき人物たちが顔を見せいていない―――と、したのです。
そのことには、よろしく女皇の機微を判っていたタケルや婀陀那をしても疑問だったようで、彼らにしてみればこの他に何者が・・・と、する雰囲気すらあったのです。
しかし―――ジィルガやジョカリーヌには、少なくとも 彼女たち のことが想い嵌まっていたようです。
―――その酒場は・・・ある集団の溜まり場・・・
戦の絶えなかった日には、絶えず六人全員が集まり、主(あるじ)の命(めい)の下(もと)―――あらゆる任務を遂行してきた・・・
しかし戦乱が収まると、主任務であった 敵国の内情を探ってくる ・・・と、云う事がなくなり、ある見解ではその集団は自然消滅するもの―――と、思われていました。
・・・いえ―――それこそが虚構、それこそが作られた虚像だったのです。
そう、戦乱が収まり、この惑星の一地域であるガルバディア大陸が統一されたことにより、
その集団である=禽=たちは、本来自分たちが帯びていたある使命を果たすため、一斉に動き出していたのです。
そして・・・ガルバディアが統一されて―――ではなく、ある一定の期間・・・人々の心が興奮の坩堝(るつぼ)より鎮まり、
幾分か平静さを取り戻した―――と、見られた今日(こんにち)・・・
=禽=のリーダーと五人の仲間たちは、この国の統治者である女皇アヱカにあるお願いをするため、階(きざはし)や郭(くるわ)を急いでいたのです。
―――が、やはり・・・女皇の部屋の入口に侍立しているこの二人には、停められてしまったのです。〕
葵:何事ですかあなたたち―――お控えなさい!!
茜:ここは、畏れ多くも陛下のお部屋の御ん前でございますよ、それを事もあろうに集団にて騒がせるとは、如何なる所存からですか。
シ:葵さん茜さん―――私です、シズネです。
どうかお願いですから陛下にお取次ぎをしてください―――
レ:私からも・・・どうかお願いします。
どうしても陛下に聞き届けて頂きたいお願いが・・・私たちにはあるのです!
葵:ううっ・・・むうぅっ・・・あ、あなた達の云っていることは判ります―――けれど、私情と公務とは別のモノです。
茜:それで私たちの友情と云うものが壊れると云うのであれば、それは最早友情とは呼べません!
ル:お願い―――もう、私たちにはあまり時間が残されていないんです。
だから・・・だから―――!
葵:影武者ルリさんまで・・・でも、事情はともかく正規の手続きを踏むべきです!
ユ:・・・やはり―――どこまで辿っても平行線、ならば強行突破あるのみ!!
茜:ユミエ・・・あなた自分の云っていることが判っているの? 喩えあなただとて、この殿中において傷害を起こすとなると―――
ユ:最早聞く耳は持たぬ! マキ―――葵の方は任せたわよ。
マ:え?あたし?? い゛い゛ぃ〜〜ちょっと今日お腹の具合が〜〜・・・
ユ:いざと云う時に使えないわね―――まあ云い、ならばこの私が・・・!
〔女皇陛下の部屋の入り口前に立ち、不審な者を入れさせぬべく、まるで守護者のような二人―――
葵と茜の二人はしかし、=禽=達の溜まり場でもある酒場「シャンツェ」の常連でもあり、
同時に彼女たちと友誼を交わしていた仲でもあったのです。
でも、そんなプライベートなことと任務とは別のことだとし、飽くまで「女皇陛下をお護りする」・・・と、云う立場を貫き通そうとする近衛の二人。
ですが・・・そう―――=禽=の誰しもが焦っていたのです、それは・・・ルリのあの一言にも現われていたように―――・・・
しかし―――それにしても、若い彼女たちが「時間がない」・・・とは?
もしかすると、=禽=全員が不治の病にかかり余命幾許(よめいいくばく)もない・・・?
いえ―――そう云う事ではなく、彼女たちが本格的に焦る・・・焦らなければならない理由があったのです。
それは―――・・・〕