≪二節;異邦の事情をよく知る者≫
〔その時―――その場にいた誰もが耳を疑ったことでしょう・・・
丞相に大将軍、帝国の双璧に近衛の二人・・・いや―――それよりも・・・
今までに一度たりともこの国の人間には、自分たちの実情などを話さなかった者達が、
どうしてこの国の女皇が、自分たちがこれまでにひた隠しにしていたことを知っているのか・・・と、云う事に、驚きを禁じ得なかったのです。
けれども・・・次第に、常時女皇の傍を離れなかったある人物に、その疑いの目はさし向けられ・・・〕
ナ:―――まさか・・・ルリ・・・お前が?!
ル:わ、私は喋っていない―――本当よ?
ア:ナオミ―――彼女を責めてはいけません。
なにより、彼女はあなた方の真(まこと)の主・・・そうではございませんか。
レ:―――!! な・・・なぜそのことを・・・?!
マ:あたしたちがひた隠しに隠していたことを・・・
シ:まさか・・・女皇陛下は、すでにそのことを知っておられたと??!
ア:そう―――捉えられても仕方のないことですね・・・
ですが―――これがわたくしの下へと舞い込んだお陰で、わたくしも何もかも知ることが出来たのです。
シ:―――っあ・・・! あれは、私の形代! まさか・・・そんな?私の形代が主を間違えるなんて!
〔事態は急転直下―――なんと事の始まりは、アヱカの下にシズネの放った形代が迷い込んだことがきっかけだったのです。
ところが、シズネにしてみれば腑に落ちませんでした。
それと云うのも、その形代はシズネ自身の血を用いて“呪”を綴り、念を込めて動くものと為したものだから、
それが主とそうでない者を間違うはずがない―――と、するのですが・・・
そんなシズネの物言いにヱリヤは、カルマを滅ぼすために一丸となっていた時に、
余所へディープスロートをしていたことに過敏になったのです。〕
ヱ:ちょっと待て・・・それはどう云う事なのだ? 事の次第によってはいくらお前たちと云えど許さぬぞ!
ア:お待ちなさいヱリヤ―――この人達はパライソのために、その身を粉にして尽力してくれたのです。
そのような些細なことは咎めるべきではありません。
ヱ:ははっ―――差し出がましいことをいたしました・・・
エ:それよりもさあ〜―――なんなの?「マグレブ」・・・って。
ガ:「陽の沈みゆく処」・・・確かそう云う意味だったねぇ、ルリ=オクタ―――
いや・・・ルリ=オクタヴィアヌス=ガーランド姫―――
ル:(!!)ど・・・どうして―――私の真の名を・・・
ガ:私は・・・「総てを識りし者」―――だからさ、よく知っているよ。
あんたの性格も、あんたたちの故郷のことも・・・そして、あんたたちがどうしてあの山脈から越えてきたのか―――も・・・
タ:山脈・・・なるほど、ヴァーナムのことですか。
そう云えばワシの故郷ラージャにても、マグレブなる地名は聞いたことがなかったが・・・するとやはり―――
婀:そういうことですか―――あなたの故郷はガルバディアの西域、そこに地名が見当たらないという事は、自然とヴァーナム山脈より西側の方角となる・・・
ガ:そう―――それに、陽が昇るのは東であり、沈むのは西・・・そのことはね、古来より不変の理なんだよ。
〔またも驚くべきことに―――いや、「総てを識りし者」であるガラティアにとっては至極当然・・・と、云ったように、
その国の統治者の娘の証しである「姫」の本名を証(あか)してみせたのです。
そう・・・彼女たちはある使命を帯び、母国の間でも「魔の山脈」と畏れられた連峰を越え、ガルバディア大陸へと来ていたのです。
そう、ある使命―――・・・今にも「滅亡」と云う二文字に晒されている、母国を救ってくれる国を求めて・・・
しかし、最近飛ばしたはずの連絡の糸が切れてしまったことが手伝っていたからなのか、大いに焦っていたこともあるにはあったようです。〕