≪三節;故郷の惨事≫

 

 

〔そこでルリは、気にはなっていたあることをアヱカに訊いてみることにしたのです。〕

 

 

ル:あのっ―――・・・今まで身分を詐称していたことはお詫び申し上げます。

  ですが、女皇陛下の下に迷い込んだという、私たちの故郷の事情を知るシズネの形代のことを・・・

 

ア:判っています―――今回はそのことで来られたようなものですからね・・・。

  わたくしとしても意地悪はしたくはないのですが・・・ありのままと云うものを受け取ってください。

 

―――それが、喩えどんなに辛い事実であったとしても・・・

 

ル:え・・・っ?

 

ア:―――カレイドよ、その顕現(ちから)の解放を女皇であるアヱカ=ラー=ガラドリエルが認証します。

  この人達の故郷が今どうあるのか、この形代の記憶を読み込みわたくしたちの前に指示しなさい。

 

 

〔「それが喩えどんなに辛い事実であったとしても」―――そう女皇は云いました。

「それが喩えどんなに辛い事実であったとしても」・・・? ほんの数週間前までは、国を出奔した時と同じ光景―――元気な父や母や大臣たちの顔が見られたというのに・・・

それが「辛い事実」―――とは、一体どうしたことだろう・・・

 

ルリは、とどのつまり―――アヱカのその発言に不安を覚え、そしてその不安を目の当たりとしてしまったのです。

 

そう―――「辛い事実」・・・アヱカの言の葉によって読み込まれた立体映像は嘘偽りのなく、

マグレブの王族が全員処刑される一場面を、ありのままに見せつけていたのですから。〕

 

 

ル:あ・・・あああっ! お―――お父様!お母様〜!! あ・・・っ・・・ああぁ・・・

シ:ルリ姫様―――お気を確かに・・・

レ:そんな・・・鏖弑(みなごろ)しなんて―――!

ユ:こいつら・・・―――

マ:ちくしょ〜! 何も頸を刎ねなくてもいいじゃんかぁ〜!!

 

ア:・・・この形代が、わたくしの下に迷い込んできたとき、わたくしはこの事実をあなた方に知らせるべきかどうかを迷いました。

  結果―――その判断の鈍さが、皆のいる前で白日の下に晒すことになってしまうことになろうとは・・・

 

ナ:―――いえ、逆にルリに代わって感謝を申し述べさせてもらいます。

  事実を知らせることは知ることよりもどんなにか辛いことだったでしょう・・・女皇陛下の心中、心よりお察しいたします。

 

ア:お待ちなさい―――ナオミ・・・何を勘違いされているかは存じませんが、早まったことをするのではありませんよ。

  あなた方は、この立体映像を見て「王国の滅亡」―――それに係る報復を描いているように見受けられますが、

  ならばなぜここにいる王族のお一人を忘れてしまっているのですか。

 

ル:でも・・・私は―――!

 

ア:ルリ姫・・・今のあなたと、かつてのわたくしはとてもよく似通っています。

  わたくしも元はテラと云う小国出身で、わたくし以下の住民は須らくカルマの手にかかったことがあります。

  それでもわたくしは、希望を捨てることなく生を繋いできたのです。

 

  ルリ姫―――今のあなたには、王国再建という重荷がのしかかってきましたが、所詮それは見えない重み―――

  かつてそれに潰されて亡くなられた方などいないのです。

 

ル:アヱカ様―――・・・

 

ア:それに・・・あの時のわたくしとは決定的に違う事―――今のあなたには、信じ得るべき友が・・・こんなにもいるではございませんか。

  こう云う時にこそ、友人たちに頼るべきなのではございませんか。

 

 

〔女皇陛下は―――厳しくも優しくありました。

辛い事実を知らせた半面、自分たち以外の者達が鏖弑(みなごろ)しの憂き目に晒されたとしても、挫けぬように励ましてくれたのです。

 

そして、こんなに辛い時こそ、この地で培ってきた友誼に頼るべきだ―――ともしていたのです。

 

そんなことに、希望と云う名の光を見失いかけた者たちも、女皇からの励ましの言葉により、

未だ見えぬ隧道の出口から、一筋の光明が差し込むのが見えた心地となっていたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

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