<第一章;生まれ変わった「個」>
≪一節;人工生命体≫
〔―――ただ広い宇宙空間の中・・・そこに、紅い艦影がゆったりと星海を漂っていました。
そしてその宇宙艦の内では、ある作業が着々と進められていたのです。
同じ宙域にある「美しく蒼き天体」から、丁度この艦へ延びてくる一本の光の条・・・
その光の条の行き着いた先には、この小さな艦影からは想像すら及び着かない様な、巨大かつ広大な研究施設が存在したのでした。
その研究施設には・・・一つの培養槽があり、その内にはなにやら「人形」のようなモノが入れられてしました。
そして例の光の条が、その「人形」に遍く入れられると、次第に「個」を表す特徴が刻まれてきたのです。
その初めは、マヌカンのような存在だったモノから・・・次第に菫色の長い髪が生え―――肉付きも良くなり・・・ある特定の「個人」へと変貌を遂げて行ったのです。
その様子を見た、この研究施設の責任者―――で、あると同時に、この艦「ゼニス」の「艦長」であるこの人物は・・・〕
ガ:フフン―――気分はどうだい・・・とは云っても、存在が定着しないことには、会話は出来ないからねぇ。
謎:『お気遣いなく・・・総て順調のようですよ―――』
ガ:おやおや、これは驚いた・・・まだ直接、口での会話も儘ならないっていうのに、私の脳内にアクセス掛けるとはねぇ。
・・・ま、それだけあんたの能力が抜きん出てた―――ってことの裏付けにも成るんだけど♪
〔現在、ガラティアが艦長を務める「ゼニス」の研究施設内にある培養槽に浸かっていたのは、「人工生命体」と云う「媒体」であり、
その媒体の内には、今回の手続きで、ある人物の魂が封入されたばかりなのでした。
では・・・その「人物」とは―――
この度、「個」としての役割を終えたばかりの「アヱカ」のモノなのでした。
それに元々―――「ヱニグマ」であったアヱカは、「個性」「特性」などは群を抜いており、それをそのまま失くしてしまう事を惜しんだ、ガラティアの配慮でもあったわけなのですが・・・
未だ培養槽に浸かった状態で、満足に口も利けなかったのにコミュニケーションが取れたと云うのは、果たして手放しで喜んでいいものか・・・
そんな事がガラティアの脳裏を過っていたのです。〕