≪四節;ヱニグマへの裁決≫
〔ジィルガは、姉のこの独り言の事を知っていました。
だからこそ、自分にも言い聞かせていたのです。
「そんな事は、万が一にも有り得ない」―――と・・・
ところが、アヱカとして生まれ変わったヱニグマを見て、ジィルガが持っていた彼女への心象が一変してしまったのです。
あんなにも―――激しく対抗していた者が・・・
あんなにも―――心憎い者が・・・
どうしてこんなにも澄み切ってしまっている―――・・・
どうしてこんなにも・・・愛おしいと思ってしまっている―――・・・
悔しいけれど・・・認めたくはないけれど・・・
ここは自分の上官である「執行官長」であり、また姉であるガラティアの裁決の通り―――・・・
「その「個」自体の自然消滅をもって、その「個」が持つ罪過の総てを払拭させるのではなく」
「その「個」が所有するポテンシャルの有意義なる活用―――すなはち・・・」
「その「個」の器を入れ替えることで、また別のレゾン・デートルを紡がせ」
「過去においてその「個」が及んだ罪過を償わさせしむるべし」
当時の宇宙の法規に基づいて―――「個」に係わる最も重い量刑は「存在の消失」であり、ジィルガも頑なにそちらの方を望んでいたのです。
しかし・・・あとになって思えば、姉の課した裁決こそ、最も重いのでは―――と、思うようになったのです。
それと云うのも、「存在の消失」というのは、云わば人間の「死」に相当するモノであり、どちらかと云えば一過性の性格が強かったのですが・・・
そうすることなく存在を維持し続け、罪過を償わせると云うのは―――裁決を下した者自身からの恩赦がなければ、「存在の消失」すら許されない・・・
永遠に―――無期に亘って・・・そうしなければならない・・・
自分の前では、易しい事を云っておきながら・・・実は、さらさら赦す気はなかった―――と、思ってはいたのですが・・・〕