≪三節;少年とアンブレラ≫
〔少年は―――お使いの途中でした・・・
しかし、その「お使い」を阻む連中と出くわし、街中の路地と云う路地をかけずり回っているのでした。
そして―――ようやくの思いで、そんな連中からの追っ手を撒いて、一呼吸吐き・・・また「お使い」を始めようとしたところ―――〕
少:―――あっ、ヤベ・・・
憲:―――いたぞ!あそこだ!!
〔てっきり撒いたモノと思っていたのに、その少年が路地から出ると、すぐ近くにその少年を追っていた者達がいたのです・・・。
そんな様子を見てみると、どうやらただ事ではない様子―――
それと云うのも、少年を追っていた者達の服装と云うのが、どこからどう見ても、この街を支配する国家の軍隊の服装・・・
オリーブ・ドラフの長コートに、ライフルのような長銃・・・しかも腕章には、赤地に金の刺繍で「MP」の文字が・・・
つまりは「憲兵」―――この国の治安を護り、反体制を厳しく弾圧する部隊の所属・・・
では、そんな彼らに追い立てられている少年は―――?
つまりそこで、この少年というのが―――反政府組織の一員であり、その「お使い」と云うのも、何かしらの伝達の途中・・・だと云う事が、朧げながらに判ってくるのです。
しかし―――喩え少年と云えども、自分達に盾突く者は赦してはおけない・・・冷血にて冷酷・・・
そんな連中に捕まれば、自分はどうなってしまうのか―――だからこそ少年は必死になって逃げました。
生来からの敏捷性を生かし、捕まりそうになっても身を躱す―――などして、どうにか逃げ延びていたのです。
でも、そんな事をしてしまえば、益々追っ手が増えてくると云うもの―――加えて、無限の体力が備わっているわけでもなし・・・
やがては、体力が尽きた処を狙われて―――捕まった挙句に、拷問によって仲間の情報を引き出さされるのも時間の問題・・・
そんな時に出会ったのです―――
追っ手から逃れようとしている少年と―――アンブレラを差した一人の女性とが・・・
これこそが運命の交錯―――・・・
これこそが・・・これからのお話しの始まり―――・・・〕