≪六節;訪問者≫
〔すると―――まさにそれが事実であるかのように、この建物の扉がノックされ・・・〕
ア:―――あの・・・すみません、どなたかいらっしゃいませんか。
・・・・おかしいですわね、あの方からの指示によりますと、ここでよろしいはずなのに―――
仕方がありません・・・ここは一つ―――『高潔なる盟約の力により、須らく「呪」を退ける言の葉となれ』
ル:『ま―――まさかそんな・・・この建物の結界を・・・』
セ:『あの女一体何もんだ―――? 親父が張った結界を・・・簡単に破りやがるとは・・・!
まあ、一つ云える事は・・・この大陸のもんじゃねえことは確かなようだな・・・。』
ヨ:『え・・・? どうしてそんな事が云えるの?』
セ:『ああん? そりゃお前―――あれだよ、ここの住人にしろ憲兵にしろ、この場所にこの建物があるってことすら認識してないからな。
だから・・・オレ達が今まで易々と活動出来てたんじゃねえか。』
〔それこそは―――このヴァンパイア達にとっては驚きの連続でした。
それと云うのも、彼らのアジトは、ここ・・・「ロマリア帝国」の住人ですら感知できない、意識と意識の狭間にあり―――
だからこそ、反政府体制をこなせられてきていたのですが・・・それが―――初めて見るアンブレラに、易々と嗅ぎつけられ・・・また侵入を赦そうとしていたのです。
けれど・・・侵入をしてきた人物の、その顔を見た時―――ヨハンだけは・・・〕
ヨ:『ああっ―――? あの人は・・・!』
セ:『あっ―――こら、莫迦っ・・・おい、ヨハン!
あの莫迦・・・結界から出て自分から姿を見せやがった―――』
ル:『ちょっと待って―――セルバンテス・・・確かあの子、あの女性を見て「あの人」と・・・』
セ:『なんだと―――?! するってと・・・』
〔近い過去に遭遇したことのある、この人物の顔を見るなり・・・ヨハンは結界の外に出ていました。
そしてその事を、ヨハンの兄貴分であるセルバンテスが窘めると、ヨハンの姉と見られるルカは、ヨハンの行動の裏にこのアンブレラが関与していると感じたのです。
すると―――・・・〕
ヨ:お姉さん―――あの時の・・・!
ア:あら―――ウフフ・・・そうだったの、坊やはここの関係者だったのね。
それに・・・どうやらあなただけではないようね、この建物の内にいる人達・・・。
セ:・・・あんた、何もんだ―――ヨハンの事やオレ達の事を知っていると云い・・・
ル:それに・・・その事を知っていて、この子に香水をつけて案内をさせたと云うの―――
ア:あら・・・あなた達は―――ウフフフ・・・そう云う事でしたのね。
なるほど―――良く似ています、このこと云い・・・彼らと云い・・・昔のあなた達にそっくり―――そうでしょう、「大公爵」。