≪七節;大公爵とアンブレラ≫
セ:な・・・にぃっ―――?! あんた・・・親父のことを・・・!!?
エ:ン・ククク―――止めておけ・・・そ奴は汝らが束になってかかった処で、到底敵う相手ではない・・・
〔なんと―――ヨハンやセルバンテス達よりも、当事者の二人がお互いを知っていました。
それもそのはず―――彼ら二人は、永い間お互いを敵と認識して、殺し合いまでしてきた間柄なのですから・・・
そして―――そう、この大陸に、いち早く派遣され・・・現在「ロマリア大陸」を牛耳っている「ロマリア帝国」を打破するため、
地下活動に励んでいたのが、「大公爵」―――エルムドア=マグラ=ヴァルドノフスク・・・だったのです。
では―――セルバンテス・ルカ・ヨハンの三人は、もしかしなくても彼の息子・娘・・・と、そう思いたくもなるのですが、
意外な事実がこの後明らかになるのです。
いや・・・それよりも―――〕
エ:フン・・・随分といい神経をしているな―――余が成し得ようとしている計画を、台無しにするためにここへと足を運んだのか・・・「ヱニグマ」―――
ヱ:相変わらずそうで何よりですわね―――ですが、もうわたくしは、あなたとは争い合う気持ちはないのですよ。
それに・・・わたくしが来るまでに、そう聞かされていたのではなかったのですか―――マグラ・・・
エ:フ・・・―――昔の汝の事をよく知っておるからな、今の汝が本当に余の味方かどうか・・・疑わしい限りだ。
ヱ:どうやら・・・簡単には信じて貰えぬようですね―――ですが、わたくしもそのことを承知の上で、この地に遣わされたのです。
今更ながら、過去の総てを水に流す―――とまでは云いません、厳しい仕打ちは覚悟の上なのです。
〔そんな事よりも―――まず心配をしなければならないのは、エルムドアとヱニグマの過去・・・
エルムドアは、地球に入植する為に飛来した「フロンティア」の一員―――
片やヱニグマは、地球を自分達の事業最前線の拠点にしようとしていた、悪の組織「ブラック・ウィドウ」の首領―――
現在の立場はどうであれ、過去には血を血で洗う抗争の相手同士でもあったのです。
それが俄かに、自分達の仲間になった―――と、云われても、聞き分けがよかろうはずもありませんでした。
ですが・・・その事は既に了承済み―――覚悟の上で、ヱニグマはエルムドアのいるこの地に派遣されたのです。
しかし―――ここで思いもよらない事態が・・・
なんと、「アンブレラ」―――つまりヱニグマに窮地を救われた「少年」―――ヨハンが・・・〕
ヨ:親父さん―――この人いい人だよ! だって、へまをしてこの国の憲兵に追われていた僕を・・・
エ:―――子供は黙って戻っていろ。
ヨ:あ―――・・・
セ:親父! あんた手前ぇの都合でヨハンを―――
エ:お前達もだ―――!
セ:あっ!おや―――・・・
ル:お父さ―――・・・
〔そしてここで、エルムドアの子供達の真実が―――・・・
実は彼らは、それぞれがエルムドア自身の左手の指から構成された、云わば彼の分身・・・
「中指」が「お兄さん」であるセルバンテスの役割ならば―――
「薬指」が「お姉さん」であるルカ―――
そして「小指」は、「弟」であるヨハン―――だったのです。〕