<第三章;気高き誇り>
≪一節;家一番の早起きさん≫
〔このお話しの「第一部」での主舞台だった「ガルバディア大陸」。
その大陸とは陸続きではありながら、「文明」「流行」など隔離されてきた・・・東側に位置する「ロマリア大陸」。
同じ地球にありながらも、ガルバディアとは独自の文化形態を形成―――進化を遂げてきたこの大陸の事を、人知れず「忘れ去られし場所」と呼んだものでした。
そしてこの大陸には、奇しくも・・・遥かな過去に敵対していた者達―――「フロンティア」と云う組織の一構成員と、犯罪組織「ブラック・ウィドウ」の元首領・・・
その彼らが、再び争い合うと云うものではなく、相互の協力の名の下に事業を展開していこうとしていたのです。
そう・・・これは―――奇妙ながらも本当のお話し・・・
それを証明するかのように、ある日の一場面―――・・・
ある住居で、他の誰よりも早く目覚め、炊事からお掃除・洗濯・・・等の家事の一切をこなす、一人の女性。
そんな―――その女性の次に起きてきた者は・・・〕
ル:ふわあ〜・・・あっ?! も・・・もう―――朝の支度が・・・
ヱ:あら、お早うございます、ルカさん。
ル:あなた―――この私より早く・・・
ヱ:はい、無理矢理押しかけたも同然ですから、せめてこのくらいはしないと・・・
―――あっ、いけない、お湯をかけたままでしたわ。
〔信じられない・・・この女こそは、エルムドア大公爵やその他の方の云ってるのには、悪逆非道にてフロンティア幹部の一人である女禍と対立し、大いに苦しめてきた悪人だと聞いているのに・・・
それなのに―――・・・やはりここ最近、一部でも取り沙汰されているように、「あの噂」は本当だったのだろうか・・・
エルムドア大公爵の娘(・・・と、云うか、彼の左手の薬指)であるルカは、この住居にすむ自分達より早起きし、朝の支度をしてくれているこの女性に対し、
或る意味で敬意と畏敬と驚嘆の入り混じった、複雑な感情を持つようになったものでした。〕