≪二節;素直じゃないね≫
〔そして、呆気に取られているルカを余所に、次々とこの家の住人達が目覚め始め・・・〕
セ:ふわぁ・・・あぁん?何やってんだ―――ルカ、ぼさっと突っ立ってねぇで、朝の支度でも始めろや。
ヨ:お早うございまぁ〜す―――あれ、この匂い・・・わあ〜っ、ボクの好物のガーリックとオニオンのスクランブルエッグだ〜♪
やったぁ〜ありがとう、ルカ姉ちゃん。
ル:違う・・・二人とも違うのよ―――だって、私が起きた時には既にこの人が・・・
ヱ:あら―――皆さんお揃いで・・・お早うございます。
では早速、キャロット・スープをお持ちしますね。
〔まだ・・・ちょっと寝惚け眼で起きてきたセルバンテスとヨハン―――
すると二人の目には、まだ朝の支度に取りかかっていないルカの姿を見て催促するのですが・・・
その彼女にしてみれば、自分よりも早起きをして、朝の内の家事を総て済ませていたと云う事に、驚かされていたのです。
それに、それだけかと思えば、この種族の好物はその女に筒抜けだった―――
するとまた、この女はどんな手口で自分達を・・・と、つい好からぬ方向に思考が向いてしまうのは、仕方のなかったことのようです。
その事は、皆が同じ食卓を囲んで頂く、朝食の席でも顕著に現れ―――・・・〕
ヱ:さあ、皆さん、今日一日の無事を祈り、美味しく頂くとしましょう。
ヨ:いったたきまあ〜ッす♪ あ〜〜んっ―――・・・うわぁ〜すっごく美味しい・・・
ボク、ニンジン苦手だったんだけど、ヱニグマさんの作ってくれたこのスープ・・・これなら何杯でも行けるや!
ヱ:あら・・・ウフフフ―――それはどうも有難うね、ヨハン君。
ヨ:エヘヘヘ、それにボクの大好物・・・ガーリックとオニオンのスクランブルエッグ―――これって、まだヱニグマさんに話してなかったよね・・・どうして判っちゃったの?
ヱ:それはね―――あなた達に非常に所縁の深い人・・・エルムさんが好きだったのを知っていましたから・・・。
だからあなた達もきっと好きだろうと―――そう思ってましたの。
ヨ:へぇ〜エルムちゃんのこと知ってたんだ―――あれ、どうしたの・・・兄貴に姉ちゃん、食べないの?
〔まだ―――幼いヨハンには、ヱニグマに対しての警戒心が薄く、また自らが危うい処を助けられただけあって、なんの抵抗もなくヱニグマと接しているのに対し、
ヨハンの兄や姉であるセルバンテスやルカは、喩え好物を目の前にしても、以前敵対していた者が作った料理だからか、警戒して手をつけずにいたのです。
いえ・・・それどころか―――・・・〕
セ:要らねえよ・・・ヨハン、お前が欲しいんならくれてやる―――
ヨ:えっ・・・いいの?
セ:・・・バカ野郎が―――
ヨ:え・・・
ヱ:―――・・・。
―――あっ、ルカさん・・・
ル:私も・・・要らない―――セルバンテスと一緒に、外で済ませてくるわ。
ヨ:姉ちゃんまで・・・ゴメンね、ヱニグマさん―――二人とも悪気があって・・・
ヱ:ううん―――いいのよ、ヨハン君。
あの二人があんなにまで怒るのも無理はない・・・わたくしは、過去にそれだけのことをしてきたんですから・・・。
ヨ:ヱニグマさん・・・でも、そんなのってやっぱりおかしいよ!
だってそうでしょう? ヱニグマさんも心を入れ替えて・・・
〔そんなに単純なことではない―――と、女はそう答えました・・・。
そして、遙かな過去に、この女がしでかした所業―――
この惑星や、遠く離れた別の銀河において、筆舌にしがたい行為をやってのけた事実を、幼い者に語りかけたのです。
その・・・おぞましさに、幼い者は身震いし―――また、涙が止まりませんでした・・・。
全宇宙に、その悪逆なる所業が響き渡り、その悪の組織の象徴とも云える旗艦「リヴァイアサン」が通る処、
仲間内でもあった宇宙海賊たちでさえも、その影を踏むことすらも憚られた・・・
まさに、「孤高の悪」でもあったのです。〕