<第四章;アジテーション・プロパガンダ>
≪一節;予断を許さぬ存在≫
〔不測の事態・・・帝國の兵士達に追い詰められ、あと少しで射殺されようとした時―――自身が持つ、アンブレラを「目晦まし」に使い、無事、難を逃れた・・・
逮捕されれば、否応なく組織の全容を喋らさせられ、然る後には、身の毛も弥立つ様な運命が、自分を待ち受けている・・・
そんな心配をしていたものだったのに、不意に現れたその女性のお陰もあって、自分は助かったのだと、ルカは思いました。
しかし―――帝國の将兵達は、自分達の国に害を齎す「異分子」を排除するため、
銃の標準を定め・・・そして一斉に射撃をした―――
そこには・・・哀れなる、二つの、それも女性の死骸があるはずでした・・・。
が―――・・・
現実には、銃の一斉砲火を浴びて、原形を留めないまでに破壊された、一本のアンブレラがあったのみ・・・
この事態を重く見た、現場の指揮官は、隈なく周辺を捜索するものの、その痕跡すら見つけられるわけではなく・・・
やがては、無念の「打ち切り」にするしかありませんでした。
それにしても・・・だとしたら、あの二人の女性は、どこへと消え去ってしまったと云うのでしょうか。
それは―――・・・〕
ヱ:―――・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
『―――どうやら、諦めてくれたようですね・・・。』
ル:『この空間は―――もしかすると、「歪曲空間」??』
『お父様の使うモノと・・・同じ原理?!』
ヱ:『いかにも、そう云う事でございます。』
ル:『でも―――あなたが・・・どうして??』
ヱ:『あら、だってわたくしは、過去には女禍と直接火花を散らしたこともあるんですもの。』
『この程度のことは、出来て当然―――とは思いませんか。』
〔未だ、自分では扱えない、父親が行使する、高度なレベルの術式―――
それを、この女は、いとも簡単に出来てしまっていた。
しかもそれのみならず、その歪曲空間と、自分達の隠れ家の空間を繋げて、瞬時に戻ってしまった・・・
この女は・・・なんとも、空恐ろしい人物だ―――
高度な術式を、簡単に行使し、平然としている・・・
こんな人物が、もし、また「敵」となって現れでもしたら・・・
ルカの不安は、尽きる事がありませんでした・・・。〕