≪七節;アジテーション・プロパガンダ≫
〔そうこうしているうちに―――「集会」決起の日を向かえることになり・・・〕
―――我々は、今こそ立ち上がらなければならない・・・
―――我々を、ゴミ同然に扱う、帝國の鬼畜たちを・・・
―――我々が是正し・・・真に、人間らしい生活を取り戻さなければならないのだ・・・
―――さあ・・・立ち上がろうではないか、同志たちよ・・・!
―――そして、帝國の鬼畜達に、我らの思いを知らしめてやるのだ・・・!
〔「アジテーション」・・・社会運動で、演説などによって、大衆の感情や情緒に訴え、大衆の無定形な不満を行動に組織すること。
「プロパガンダ」・・・何らかの、政治的意図を持つ、宣伝。
民衆が不満としている意思を煽らせ、また昂ぶらせていく―――・・・
そうした、一大プレゼンテーションとしての「集会」は、一見、成功したかのようにも見えました。
壇上に上がる、レジスタンスの指導者の、意気揚々にして声高に・・・そして、その意思の強固なるを物語っているかのような腕の振り上げ方は、
現政治体制に不満を持ち、この「集会」に参加した者達を、否が応でも奮い立たせたものだったのです。
しかし―――・・・
更なる、意気の高揚を図るべく、壇上に立つ者は、再び熱のある「アジ・プロ」を行おうとするのですが・・・〕
―――直ちに解散し、その首謀者は大人しく投降せよ・・・
―――さもなくば、全員をこの場にて射殺する・・・
反:なにっ、MPのやつらだと?!
ううむ・・・ここは俺に任せて、お前達だけでも逃げてくれ!
反:しかし―――リーダーであるあんたを失っては、オレ達だけではどうすることも・・・
反:俺のことを心配してくれるのは有り難いが・・・燻り始めたレジスタンスの芽を、こんなことで潰されてしまうのは、俺の本意ではないんだ。
それに、奴ら自身でも云っているように、無抵抗の者達にまで、手にかけるはずは・・・
佐:フン―――ク・ク・ク・・・そんな、お前達の理屈など、知ったことではない。
反:なにっ?! お前は―――・・・
佐:ほう―――ゴミ溜めに生息するドブネズミの類でも、どうやら私の顔は知っているらしい・・・。
実に不愉快なモノだ。
だからこそ―――皇帝陛下の気を安んぜるために、喩え僅かながらとは云えど、お前達の様な「反乱分子」は取り除かなければならないのだ!!
反:くうっ―――「鬼畜」の一人・・・大佐・・・っ!!
佐:フッ―――殺れ・・・
反:ぐわあぁぁ・・・・!
〔冷徹な笑みを浮かべた大佐は、無論のこと・・・反乱・危険分子である彼らを、一人として逃がそう・・・などとは、思ってもいませんでした。
乾いた、威嚇のための銃声が、二・三発、虚空に鳴り響き・・・
この「集会」の、中止と散会を促すかのような、勧告・警告の科白が、会場内に木霊する中・・・
「集会」を執り行っていた者達は、この会場が、憲兵の連中によって包囲されたことを・・・
まさに、蟻一匹逃さない布陣を敷いている事を、思い知ってしまったのでした。
それに―――彼らは、儚いながらも、一つの可能性を見出していたのです。
つまりは・・・彼らは非武装なのだから、このまま大人しく投降すれば、その内放免されるだろう・・・。
ですが、そんな者達に向けられた、「鬼畜」の一言は―――・・・
無抵抗、非武装の者達に関しても、なんら容赦なく・・・
「死」の鉄槌を―――機銃での、一斉掃射を命じたものだったのです。〕
To be continued・・・・