<第五章;ヴェロー・シファカ>
≪一節;存在の経緯≫
〔話しは・・・先ず、少しばかり過去に遡り―――
ヱニグマが、この『新章』で復活を遂げた、「一話」での、あの場面でのこと・・・。
すっかりと存在を定着させたヱニグマに、ガラティアはこんなことを訊いてきたのです。〕
ガ:ねえ―――ちょっと・・・あんた、訊いてみるんだけどね・・・。
ヱ:はい、なんでしょう。
ガ:「ヴェロー・シファカ」・・・って、聞いたことある?
ヱ:その名称を持つ者達・・・確か、「ブラック・ウィドウ」の雑用処理係―――云ってみれば、「係」とつけるのも、おこがましい役目を持つ者達のことですが・・・それが何か―――
ガ:ヤレヤレ・・・いきなり大当たりだよ。
「総てを識る」・・・ってのも、あんましいいもんじゃないねぇ。
ヱ:・・・いるのですね、あの者達が、地球に―――
ガ:なにも、あんたがやるほどのことじゃないよ。
「ウィドウ」でも、そんな最底辺の任務をしてたんだったら、あの連中にやらせれば・・・
ヱ:何を考えているのですか?!
あなたは未だに、「ブラック・ウィドウ」を過小評価している嫌いがあるようですね。
喩え、どんなに最底辺の任務だとはしても、あの者達は、わたくし達幹部の「仕様」と云うモノを、その目に焼き付けているはず・・・
それが―――母体である「ウィドウ」が消滅してしまったとはいえ、あの者達が、第二のウィドウになる可能性だってあるのですよ。
ガ:いやぁ・・・だから・・・ねぇ―――そんなに熱くならなくても・・・
ヱ:こうしてはいられません、即刻手を打たなければ―――
ですからガラティア、このわたくしを、早く彼の地に行け―――と、こう仰ってください!
ガ:いや、だからさぁ・・・あんたには、やって貰いたい事があるんだ―――って云うのに・・・
(しっかしまあ〜〜なんて「熱い」んだろかね、だから女禍ちゃんと、アレロパシーなんだ・・・って、判らなくはないんだけどさぁ―――)
〔漆黒の宇宙空間に漂う、真紅の艦・・・それこそが、ガラティアが所有をしている「ゼニス」なのですが―――
嘗て、自分の妹に敗北し、本来ならば宇宙の闇に呑まれていた存在・・・
その存在たっての願いと、有り余るその能力のポテンシャルを、このまま失っては惜しい―――と、した、ゼニス艦長との思惑が一致し、
そしてまた、他者(恐らくここでは、他の「フロンティア」幹部連中を指すものと思われる)の眼を欺けるため、
わざわざ「ゼニス」の研究施設にて存在を復活させ、恰も自分の所有する艦の一乗員の様にカムフラージュしたのです。
つまりは・・・これが現在のヱニグマ―――ユリアの存在する意義・・・「ゼニスの乗員」=「ガラティアの配下」と、云う事なのです。〕