<第六章;聖なる炎を拝みし者>
≪一節;「巣」の内にて≫
〔今回の「アジ・プロ」を、失敗させてしまったことにより、その三人の面持ちは冥いモノがありました。
とは云え、今回の失敗は、内部の反逆者が、敵側に寝返ってしまったことで、引き起こされた事でもあったのです。
しかし―――・・・〕
ヨ:・・・なあ、兄貴―――ボク、未だに信じられないよ。
セ:ハッ・・・だからお前は、いつまで経っても「お子ちゃま」だって云われるんだよ。
ル:セルバンテス―――そんな云い方って・・・
セ:だが、ルカ、お前だってそうだろう。
あたら信用していたあの女に、一杯食わされた象になったんだからなぁ。
〔また今回も、大公爵が創り出している「巣」の内で、三人兄弟は、互いの意見を交換していました。
特にその中で、やはり話題の中心となったのは、今回「フロンティア」を裏切る象となった者への批難が集中したのでした。
ところが・・・皆、ある一線から、厳しいまでの追及に言及は、なされないまま・・・
それも実は、ある理由があったのです。
その理由と云うのも―――その場には、それだけの「緊張」が、あるからなのです。
もう少し詳しく云えば、その「巣」の内には、「あと二人」の存在・・・
その内の一人は、この「巣」自体を創った人物―――大公爵・エルムドア=マグラ=ヴァルドノフスク・・・なのですが、
では、「あともう一人」の―――それも「女性」は・・・?〕
誰:・・・どうしたのだ、云いたい事があれば、この際云っておいた方がいいぞ。
ル:い―――いえ・・・わ、私は、遠慮をしておきます・・・。
セ:―――ケッ!
ヨ:(こ・・・怖いよ〜この女の人―――)
〔堂々たる気迫に、ふくよかなる軆付き。
この相反するモノを、同時に持ち合わせるご婦人は、誰・・・?
しかし―――この三人も、まだ云い足りないことがあるのだろうに、誰もが遠慮をして、口を噤んでいた・・・
けれども、それはそれで、仕方のない事―――
自分達の、「親」にも似た存在である「大公爵」と、同等の実力を持ち合わせ、
嘗て、100万年前をして、「龍皇」と呼ばれたことのある人物―――スターシア=ラゼッタ=アトーカシャ・・・〕
龍:ふむ・・・お前の息子たちだから、忌憚のない意見を聞かせて貰えると思ったのだが、な。
エ:クク・・・その辺にしておいてやれ、ラゼッタ・・・。
それに、誤解のないよう云っておくが・・・この者達は、余の息子・娘などではない。
そのことくらい、知らぬ汝ではなかろう。
龍:それは、現在の私とて同じだろうが。
フン・・・まさか、こう云う時の為に、私の血を吸っていたのではあるまいな。
エ:フフ―――さてな。
余が、この力に目覚めたのは、近年になってからのことだ。
最初から判っているのであれば、もっと相応しき者を・・・
龍:それは、カレンのことか?! それともブリジットのことか?! よもや・・・「あの方」のことではあるまいよな!
いずれにせよ、その不遜な口の利き方・・・教育をし直さねばならんのは、案外お前を先にせねばならんのかもしれんな、マグラ。
エ:フッ―――初やつだ。
何も変わらんな、汝の娘であるヱリヤに、よく似ている。
龍:まさか貴様―――私の娘までも!!
エ:それ以前に、余は汝の血を頂いている。
同じような味わいは、一度きりでいいモノだ。
龍:どう云う意味だ―――それは・・・
エ:汝の様に、良い女の血は、それ同様にとても癖のある味わいをしている・・・と、云う事だ。
しかもそう云う味わいは、再度味わえるモノではない。
この回答では、不満足かな・・・スターシア。