≪二節;新たなる提示≫

 

 

〔それに、自分の部下が一方(ひとかた)ならぬ苦労をしてきた事を、よく理解し得ていた盟主は―――・・・〕

 

 

ガ:≪・・・だったらさ、あんた―――その方面での「監察官」てのを、やってみる気はないかい。≫

ユ:「監察」・・・で、ございますか? このわたくしが??

 

ガ:≪ああ、それならば、あんた自身も表舞台へと出る事もない、それに、少しでも不穏な動きを感じ取った場合、それなりの権限がある。

  但し・・・≫

ユ:・・・憎まれ役ならば、慣れております。

 

ガ:≪そうかい―――なら、敢えてお礼は云わないでおこう・・・。

  それに、その方があんたも動き易いだろうしね。≫

 

 

〔意外にも、この大陸での「監察」の使命を提示し、表舞台には立たないながらも、内面からの腐敗を是正させようとしていたのです。

 

しかも、この・・・ガラティアから提示された「監察」の使命とは、何も新政府の要人としてではなく、どちらかと云えば・・・〕

 

 

ル:セルバンテス―――少しは手伝ったらどうなの・・・。

セ:口煩(くちうるさ)いやつだなぁ~地下活動が終わったんだから、少しくらいのんびりとさせろや。

ヨ:兄貴も懲りないよなぁ~そんな事を云ってると、親父さんの代理の人に、またどやされるよ。

 

セ:ち・・・またここにも、小煩(こうるさ)い事を云うガキんちょが―――・・・

  でもよ、親父の代理と云ったら、あれだろ・・・スターシア~とか云う、おばはん・・・

 

ス:いい度胸をしているな―――貴様・・・この私のことを、「おばはん」などと・・・

  さすがに、お前の血を引いていると云う事の様だ―――な・・・マグラ。

エ:フッフッ・・・その位で勘弁してくれ―――ラゼッタ・・・

 

ス:ほら!そこで何をしている!! さっさと自分に課せられた仕事をこなさんか―――!!

  全く・・・見ていてこちらが腹立たしくなる。

エ:ククク―――なまじ、過去の余と汝・・・なのだからな。

 

ス:フッ―――そうだな・・・思えば、マエストロもプロフェッサーも、そして女禍様も・・・今の私と変わらぬ胸中であったろうか。

エ:あの者達と、我らとを同じに考えるから、卑屈が頭を(もた)げてくるのだ。

  成り行きに任せればよい・・・ただ、そこで道を間違えようとした時に、それを(ただ)せばよい・・・それだけの話しだ。

 

 

〔その一方で、早くからこの大陸に根を下ろしていたヴァンパイアの一族は、各々に課せられていた任務(しごと)を、忠実にこなしていた処でした。

 

これは、そんな時の出来事―――・・・

 

某日、自分に課せられていた任務(しごと)を中断し、一息ついていたセルバンテスに、ルカが指摘をしていたのがコトの発端でした。

けれど、そこはそれ―――他から見れば、普通の・・・いつもの兄弟喧嘩のように見えはするのですが、

少し前から、エルムドアの「左手の指」を介して復活を遂げていた者達だけに、その彼らが取り交わすやり取りなどは、過去の自分達を見ているかのようだった・・・

それを、スターシアからしてみれば腹立たしい事でもあったのですが、

今の自分のこうした感情を、やはり自分達を使役していた人達は、同じ思いだったのだろうか・・・と、思ってしまったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

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