≪三節;ヴァンパイア達の任務(しごと)

 

 

〔それはそうと・・・話題は、ここ最近の、この国の内部情勢について―――が、話し合われるところとなり・・・〕

 

 

ス:―――それで?新政府の方は巧く機能しているのか・・・。

ル:はい、私が調査をしたところによりますと、フロンティアから用意された「ダミー」は、これと云った支障もなく、次第に人々の心を捉えつつあるようです。

 

ス:フロイライン―――少しは言葉の選択に気を付けたまえ。

  確かに、この国の施政を司っているのは、フロンティアから用意されたモノだが、「ダミー」だと口にするのは不適切のように思われる。

ル:は・・・はあ―――以後、気をつけます・・・。

 

ス:うむ、次―――

セ:オレの番だな・・・この国の食料自給率は、未だ二割―――と、低い段階だ。

  これも、前の政府が重税が課している処に、問題点が残っているようだが・・・

  それに、流通している通貨も、「改鋳」と称して恒例のようにしていたんだが―――オレ達がこの大陸に来た当初よりかは、明らかに質が劣ってきているのが現状だ。

 

ス:ふむ・・・お前にしてはよく調べたな―――

  よし、通過の悪鋳(あくちゅう)に関しては、慢性的なインフレになりかねない、そこの処はマグラを通じて、あの方々に意見を具申してみようかと思っている。

  では、次―――

ヨ:ボクだね、人々の暮らしぶりになるんだけど―――今までの圧政に慣れているからか、不満はそんなに出ていないようです。

  ただ―――・・・

 

ス:ふむ・・・人々の暮らしぶりが良くなるに従い、今まで自分達を抑えつけていたモノとは、一体なんだったのだろう―――と、気付き始める奴が出てくると云う事か・・・

  だが、その心配ならば要らない、人間と云う者は、苦しみから解放されると、以前までの苦しみを忘れやすい傾向にあると云われている。

  ただ―――留意しておかねばならない事は、またそのような状態になった時に、その記憶が呼び起こされてくる・・・と、云う事だ。

  このことはつまり、彼らを善き方向に導いてやれる、我々の存在が不可欠であると云う事だ。

  以上のことを念頭に置き、諸君も慎重な行動を期して貰いたい―――

 

 

〔そもそもの、彼ら(ヴァンパイア達)任務(しごと)とは、帝國の圧政下にあった民衆の心の状態と、自分達が所属する組織―――「フロンティア」が用意した、「ダミー(見せかけの者)」の存在が巧く行っているか・・・

その事に関しては、実によく調べたもので、今の処は・・・ロマリアの民衆は、不満を抱いてはいない―――と、云う事が判っては来ましたが、

ただそのことで、両手放しで安心ばかりはしていられない・・・また、昔のように―――元に戻った時に、

今度こそ民衆の不満は爆発するであろう・・・と、スターシアは、強く釘をさしておいたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

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