≪四節;新装開店≫
〔それから程なくして、彼らの努力の成果を、エルムドア大公爵に提出したスターシアは・・・〕
ス:―――と、まあ、これが、現在のこの大陸を取り巻く現状だ。
エ:ふむ・・・中々良い出来だ。
この大陸の「監察官」殿のそれと、そう違いはない―――・・・
ス:ユリア=F=クロイツェル―――完全に、この大陸の住人になり済ますとは・・・
エ:流石―――と、云った処だ・・・この大陸の住人共も、よもやアレが、自分達を「監察」・・・視察し監督する者―――だとは、思ってはいまい。
それに・・・あの者が出している店舗も、評判は上々だと云うではないか
ス:・・・なんと云う名―――だったかな・・・
エ:「フラワーショップ・シャンバラ」・・・
ス:せめてもの、罪滅ぼしのつもりなのか―――
エ:だが、まあ・・・事実として、この惑星は、女禍の艦艇である「シャンバラ」と融合したから、今まで保ってきたようなものだからな。
〔簡潔ながらも、決して的外れではないモノを、大公爵に提出してみたところ―――
彼の手元には、別の誰かの・・・この度から、この大陸の「監察」を行っている者からの「報告」も、同時に上がっていたのです。
この二つを見比べ、自分の分身たちが「監察官」に負けない位の任務をこなしたことを、大公爵は褒めたのです。
それにしても・・・この大陸に住まう者達を「視察し監督する者」とは、あたらそうした立場―――云い換えるなら、支配的な立場には非ず、
この大陸に溶け込み、まるで・・・あたかも、この大陸に長年、居着いているかのような誰か・・・
それが、ユリア=F=クロイツェル―――だったのです。
ではどうやって、ユリアはこの大陸の者達に、受け入れられる事が出来たのか―――・・・
それは、この女性が持つ、特有の不透明さ・・・も、さることながら、やはり一番大きかった事は―――・・・
元・ロマリア帝國の「都」として栄えていた町の一角に、そのお店は新装開店をしていました・・・。
そのお店の名前は、「フラワーショップ・シャンバラ」・・・
季節折々の草花を取りそろえ、いい芳香りが漂う・・・素敵なお花屋さん。
そのお店の経営者は、未だ年若く、気立ても良かった・・・
一人暮らしの老人の住居を訪問し、少しでも元気になって貰おうと、お店の花を飾らせて貰ったり・・・
また、公共の施設へと赴いては、ディスプレイとして、お店の花を飾らせて貰うなど、務めて人々の為になるように奉公したモノだったのです。〕