≪五節;来客≫
〔そんなある日の出来事―――ある客を出迎えた、そのお店では・・・〕
客:・・・花を、一つ所望したいのだが―――
ユ:あ・・・は〜い、少々お待ちを―――
はい・・・お待たせを致しました―――どう云ったお花を、しょも・・・ラゼッタ―――
ス:フ・・・中々いい店ではないか。
あの方の「ラボ」を思い出す。
ユ:―――・・・。
ス:そんなに警戒をせずとも、今回はここへ客として出向いたのだ。
この国の、住民達に評判の良い・・・この店に―――な。
〔その日、「シャンバラ」では、水やりなどの手入れや、商品の状態のチェックをしているユリアの姿が・・・
そんな時に、突然の来客として現れたのが、あのスターシアだったのです。
そして、この意外な来客に、少なからずの動揺を見せてしまうユリア・・・
現在のこの国を陰から支え、善き方向へ―――と、是正する者・・・
しかし実際の処、スターシアも、そしてまたあの一族達も・・・この国の住人達には知られていない存在なのではありますが、
そうした彼らの有り様を理解している―――からこそ、今回のスターシアの突然の来訪に、戸惑いは隠せなかったのです。
それに・・・その理由が―――ユリアにしてみれば、どことなく判ってくるようでした。
そもそも、自分と彼女は―――・・・すると、ところが・・・〕
ス:ふむ、品揃えも充実している、それに―――店舗の内装や、商品のディスプレイなど、実に客の関心を惹きつけようと努力した跡が伺える。
まさに、看板に偽りなし―――と、云った処のようだ。
ユ:あの・・・それで、今日は何を―――
ス:おや、云わなかったかな・・・。
一つ、花を所望に参ったのだ。
「巣」の内は、どうにも辛気臭くてな―――昔の私の面影を宿している者などは、少しくらいは気をまわしていいはずなのに・・・不思議とそうではない。
全く、皮肉と云った処だ。
ユ:まあっ―――ウフフ・・・
ス:・・・ようやく、笑って頂けたようだな、ユリア―――
ユ:え? あっ―――・・・
ス:だが、それでいい・・・。
先程までの顔は、就中、客に見せる様なものではなかったぞ。
〔スターシアが客として店内に顔を覗かせた時から、ユリアは顔を強張らせ・・・とてもではありませんでしたが、お世辞にも接客用の「それ」ではなかったのです。
けれど、それは仕方のない事―――
元々ユリアは、遙かなる過去に、スターシア達の敵として現れ、多くの彼女達の仲間を手にかけ・・・互いに憎しみ合っても来たのだから。
だからユリアは、彼女達とはそういう関係であったのだから、ある程度の覚悟はしておいたのです。
それを―――・・・流石に心の準備が整わない内・・・と、云うのは、内に波風をさざめかせるモノらしく、
そこでスターシアは、ここへ訪れた真意を語ったところ、これがまた皮肉が効いていたので、ユリアもつい、頬を綻ばせてしまったのです。〕