≪六節;非売品(売られない商品)

 

 

〔こうして―――場の空気も和らいだところで、スターシアの本懐である、本日の品を定めた処・・・〕

 

 

ス:と、まあ・・・それはそれで良いとして―――

ユ:あ、はい、お花を一つ―――でしたね。

  それではどう云ったお花に致しましょう。

 

ス:そうだな―――ふむ・・・うん、あれがいいな、あれにしよう。

ユ:はい、あれです―――ね・・・(ああっ!) あ・・・あの・・・あのお花だけは―――

 

ス:どうしたんだ―――いいではないか・・・たった一つの、小さな花くらい・・・。

  それにここには、こんな小さな花よりも、豪華で見栄えの良い大きな花が沢山あるではないか。

 

 

〔そのお店には、見栄えもよく、いい芳香(かお)りがする、綺麗な花が沢山ありました。

けれども、どうしたことからか―――スターシアは、その中でも取り分けて小さく・・・見かけも、他の花より見劣りしがちな、小さいながらも可愛い花を望んだのです。

 

ところが・・・不思議なのは、そんな―――どこにでも咲いている様な小さな花を、ユリアは決して手放そうとはしなかたのです。

 

どうして―――なぜ―――・・・

 

(はた)から見れば、このお店での最近の売れ筋である「蘭科」の花や、「薔薇科」の花のような豪華さはなく、

やもすれば、その辺の道端や山野に自生していそうな、青紫色をした小さな花だと云うのに・・・。

 

それが、こんな小さな花に、一体どれだけの魅力があると云うのでしょうか。

 

 

それが実は、この小さな花には、それにも況して、重大な意味が含まれていたのです。

その意味も、ユリア自身の名前に、深く関わってきている事でもあり、現在の彼女の存在意義(レゾン・デートル)にも関与していたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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