≪二節;“お山”の伝承≫
キ:それよりも・・・申し訳ありません。
私も、このような身でなければ・・・ともに探しあえたものを。
サ:いや、気にすることはないんだよ。
あたしも、ようやくここに慣れてきた――― ってとこだしね?
キ:(ふ・ぅ・・・・) 私の・・・この、直情径行なところさえなければ・・・。
お前は――― 感情が出やすいのが欠点だ―――。
と、よく主上に窘(たしな)められたものです。
ところで―――、今日こちらに赴く事になった用件・・・とは・・・よもや、とは思いますが。
サ:ああ、あんたの思っている通り。
あのお方の魂を持ったお方が、現れたんだよ・・・。
キ:そうですか――― 数年前、西の列強 ラー・ジャ にも現れた――― と、聞き及んでいましたが・・・。
今度こそ、間違いはないようなのですね・・・。
サ:あぁ―――、あちらの方は、あたしが確かめに行く前に、亡くなったそうだけど・・・
今度のお方こそは、間違えようがない・・・。
何しろ、このあたし自身の“眼”で、確かめてきた事だしね・・・。
キ:あなたの・・・眼力には、昔から定評がありましたからね。
サ:(ふふ・・・) ありがと。
とりわけ、あんたからそう言ってもらえると、嬉しいよ。
キ:・・・・それで、いかがでしたか?
サ:その――― 瞳の奥に宿されたる、頑健たる意思と――― 万物を癒すほどの慈愛―――
どれだけ経(た)とうが・・・・あたしが見紛(みまご)うはずもない・・・
7万年前に、お伺いした 女禍様の瞳 ・・・・そのままだったよ。
キ:そうでしたか・・・。
ならば、私も一目お会いしたいものです。
サ:ああ、会ってくるといいさ。
お山の――― ゾハル山に棲むという、あんたの主上に会った後・・・でね。
キ:はい―――。
〔こうして、友二人は、互いの別れを惜しむかのように、その店を後にしたのです。
(この後の記述は、本編を参照の事―――)
それにしても、サヤは気になる事を言っていましたね? そう・・・通称“お山”と云われる山、 『ゾハル山』 ―――と・・・。
この山は、古えから――― そう、あの女禍の治世の頃から、とある恐るべき者が棲まう処として、畏怖の対象ともなっていたのです。
では、その“とある者”とは―――
常に、灼熱の焔を身に纏い―――
その身には、焔よりも紅きとされる―――
熾緋なる鱗
そして、その身の丈は―――
まるで小山を思わせるかのような―――
巨大な龍
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その、龍を主と仰ぐ、彼女もまた・・・・そうなのでしょうか?
そうこうしているうちに――― 夜が明け、これからどこかへ出かけるのか、
余所行きの衣装に、気持ちばかりの手荷物――― 旅支度を終えた、キリエが一路向かった先は・・・
ゾハル山
実は、この、 ゾハル という山は、かつては手のつけられないほどの、活火山として知られており。
そのとある者・・・件の 巨大な龍 が棲まう以前は、山全体が炎で包まれているという――凶山――として、畏れられていたのです。
それでは・・・・今は違うのか―――?
そう――― その龍が居つく事により、山を覆っていた炎は自然と収まり、変わって、霊験あらたかな場所――霊山――に生まれ変わったというのです。
では、その位置は・・・・
このガルバディア大陸の、南西の方角。
そして、そこに行くには、列強の一つ『ラー・ジャ』と、『サ・ライ』を通過しなければならず、
また・・・この大陸にある、二つの大河、
レテ
アーケロン
を渡り、加えて、一つの山脈を乗り越えなければいけない・・・
と、言った、全行程でも、数ヶ月を要する旅路だったのです。
そんな・・・旅の道すがら、こんな事があった模様です。〕