≪二節;目晦ましの手段―――≫
〔しかし―――このままでは埒があかないと踏んだその騎士は、ある一計を案じたのです。
その“ある一計”とは・・・
いつも、この婀陀那につきしたがっていた、彼女の片腕とも言うべき存在・・・
しかも、女頭領敗北の折には、その行方がわからなくなっていた女性―――・・・
紫苑=ヴァーユ=コーデリア
そう・・・なんと、紫苑が目の前に―――?!!〕
騎:連れてきたか―――
獄:へい〜〜――――(グイッ――)
紫:ああ―――っ・・・
婀:(はっ―――!)お・・・お主―――!!
紫:も―――・・・申し訳ありません・・・
婀:(―――っ、く)その女を・・・どうするつもりなのじゃ―――
騎:フフッ―――知れた事よ。
どうやら・・・キサマは、自分が痛い目に遭わされても、それが我慢できるタイプなようだからなぁ〜〜―――
だ・が・・・金魚のフンみたいに、キサマにつき従っていた、この女が痛い目に遭わされるとなると―――・・・
どうかなぁ〜〜―――
婀:うっ―――・・・(わなわな)
騎:(フッ―――フフフ・・・)試しに―――こいつの目を刳り貫いて見るか・・・
紫:いやっ―――!止めて・・・た、助けて下さい―――
頭領―――
婀:(・・・・なに?)
〔自分の痛みに耐えられる者を、いくらいたぶっても効果がない・・・
それであるがゆえに、婀陀那の近侍である紫苑という女性を探し出し、捕まえて来て婀陀那の前に引き出されている―――・・・
と、いうのは、やはりそれなりの理由があったのです。
ですが―――・・・あと一歩のところで、この者達は、大きな間違いを犯していたのです。
それは・・・この紫苑が言った、『頭領』という言葉―――・・・
もし、そこにいるのが、紫苑本人であるならば、“婀陀那様”か、“公主様”としか、呼ばないはずなのに・・・・
だから―――婀陀那は、そこにいる者が、自分の口を割らすために、何処からか連れてきた『真っ赤な贋物』だということに、
いち早く気付いたのです。
けれど・・・それにもかかわらず、この者達は、まだ“お芝居”を続けるようです―――〕
騎:へッへッ―――覚悟しな・・・
紫:い、いやっ―――!助けて―――!!
婀:(はぁ〜)・・・・ヤメよ――――
紫:(フッ・・・)
騎:(ニヤリ)ほぉ〜どうした・・・喋る気になったか―――
婀:・・・ああ―――そうじゃ・・・こちらに来たまえ、聞かせてしんぜよう・・・。
騎:ああ、いいだろう―――で?どこにいる・・・
婀:・・・キサマの―――ケツの穴じゃ!
騎:(んな―――)なんだと―――?!!
婀:(フッ・・・クク―――)三文芝居なら止めよ、退屈でならぬ・・・。
それに、妾が喋る気になったのも、うぬらの臭い芝居をやめさせるためよ。
紫:な―――ナゼ、これが芝居だと・・・
婀:(フフ・・・)のう・・・妾の部下に成りすました方―――
紫:(ぅん?)
婀:容姿だけ、似せてもつまらぬものぞ―――
紫:ん、な―――・・・(顔紅)
婀:ヤレヤレ―――・・・妾の口を、この程度で割らせようなどとは・・・まさに滑稽そのものよ、一気に興が失せた。
今後この手の芝居を打つのなら・・・もう少しよい役者を選ぶがよろしかろう―――
〔実を言うと・・・この、紫苑の格好をしていた者―――その正体とは、
やはり先ごろ、一敗地にまみれたクー・ナ国の・・・
ヒヅメ=ヤトー=キュベレイ
だったのです。
この・・・彼女の養父だったクー・ナ国の将、
ギャラハット=シャー=ザンフィル
も、ヒヅメと同じく、カ・ルマに敗れており、やむなくして“敗軍の将”と、なっていたようなのです。
そこで―――カ・ルマの陣営は、ヒヅメが習得している“忍術”というものに目をつけ、
なんとしても婀陀那の口を割らせよう―――と、したようなのですが、
ヒヅメの努力の甲斐なく、失敗に終わってしまったのです。〕
ヒ:クッ―――・・・(ズルッ)
騎:ちっ・・・この役立たずが―――
ヒ:・・・すまない―――
けど、アタイは、その者の容姿は、あんた達のお仲間からの口伝だけでも、どうにか分かったけど・・・
その性格までは分からない―――その事は、事前に言っといたはずだけど?!
騎:けっ―――!!
婀:(フ・・・)どうやら、そこのお嬢さんの方が、一枚上手のようじゃったのう―――
騎:う・・・うるセぇ!黙りやがれ!!
婀:(フ・・・ヤレヤレ、喋れと言うたり、黙れと言うたり―――忙しき事よ・・・)
〔どうやら、寸での処で、婀陀那の口を割らせる事に失敗したカ・ルマ陣営―――・・・
ですが・・・このとき、口を割っていたほうが、のちの婀陀那のためにもよかったのかもしれません――――。〕