≪四節;密入国者≫
〔―――閑話休題―――
この、彼らの会話より少し前・・・・任務のために、既にこの国に潜んでいる―――と、いう 仲間 と、合流するために、
密入国を果たした者が・・・・それは、なんとあの―――〕
ナ:ふ・・・ぅ・・・。
(鴉の奴は・・・大丈夫なんだろうか・・・・)それにしても、薄気味悪い処だ――――
まだ、日中だというのに、こんなにもウス暗いんだから・・・な。
〔どうやら、禽のリーダー格、梟―――こと、ナオミだったようです。
それにしても、既にカ・ルマに潜入しているのが、鴉・・・・とは。
それよりも、先程、カ・ルマ大王―――サウロンと、その七人の側近の前に引き出されながら―――も、
揚々として自宅に戻ってきた者が・・・・それは――――〕
がさ―――・・・ゴソ―――・・・・
バッッ――――!
シ:ぷふぅっ―――!
――――・・・・・ふんっ。
バサァッ―――!
ザァ――――――――ジャ――――――
〔あの・・・黒ずくめの女、シホのようです。
しかし――― 自宅に帰ってくるなり、着ていたモノを脱ぎ捨て、浴室でシャワーを浴びるその様は・・・・
滴る水がそのままに反映されているような――――白銀の長髪・・・・に、
理知的でもあり、また・・・時には何を考えているかさえ、分かりかねない――――灰色の瞳・・・・
そして、ふくよかな肉体―――・・・と、そのどれをとっても一級のモノが、あの黒き衣の下に隠されていたというのです。
そして――― 今日の汗を一通り流し終わり、浴室から出ると、そこには――――!!〕
シ:(はっ―――!)誰―――!
ナ:いよっ――― お久し。
シ:ふぅ・・・なんだ、誰か―――と、思ったら・・・・ナオミか。
ナ:へへへっ――――
シ:全くぅ―――― 大体、をとめの部屋に、音も立てずに忍びこんで・・・それで平気な顔〜〜だ、なんて・・・・
趣味悪いぞぅ??!
ナ:いやぁ―――悪い悪い。
それよりも、アタシがここに来ている時点で―――― 何の用件なのか・・・は、分かってるんだろう?
シ:そりゃ―――まぁね・・・・
〔この家に・・・・シホの居住に、音もなく侵入していたのは、ナオミ――――
だが、禽のリーダーであるはずの彼女が、ここに―――・・・とは。
そう・・・・予想の範疇を超えないコトには、シホこそが 禽の一員――――鴉 だ・・・と、いうことなのです。
そして、ナオミが、どうして今ここに自分がいるか―――の、理由を問うたところ、シホからは意外な返事が―――・・・〕
シ:確か―――に、あんたがここに来たことの意味は分かっている・・・・が、今はダメだ、一緒に行けはしない。
ナ:・・・・ナゼ?
シ:今―――大事な計画を実行中でねぇ・・・中途半端には終わらせたくはないんだ。
ナ:だけど・・・しかし―――
シ:なぁに――― 大丈夫、心配するなって。
私はヤツ等如きに取り込まれたりはしない・・・だったら―――逆にそれを利用してやるまでさ・・・だろ?
ナ:・・・・・。
シ:・・・・・まあ、確かに、一緒に行けないのは残念だけれど、今まで採取して来た情報(モノ)はもって帰ってもらうよ。
ちょっと待ってて―――
〔“一緒には行かれない―――”この言葉を耳にしたナオミは、非常に不安に駆られたのです。
なぜならば、自分達の仲間の一人が、この・・・以前、杳(よう)として得体の知れないこの場所に、たった一人でいさせることに―――・・・
でも、シホは、一緒に行かれない代償として、自分が今まで収集した情報を、ナオミに・・・禽のリーダーに、受け継いでもらう様子・・・・
そして―――〕
シ:お待たせ――― これがそうさ・・・よく見て。
ナ:(ガサ)(こ―――これは!!?)
―――・・・これは・・・本当なのか―――?
シ:あぁ――― それだけ集めるのにも、えらく苦労したもんだよ・・・
その分、カネも、時間も費やしたけど・・・・ネ。
ナ:そうか―――そいつはご苦労だったな。
シ:いやぁ―――なぁに・・・・
ナ:そういうことだったのなら・・・仕方がない、引き続いて収集してもらおう。
シ:(フフ―――・・・)分かってるさ・・・・お頭。
〔この時、シホが開示して見せた情報―――
それは、『古えの魔皇と、七人の魔将の復活』だったのです。
それを見たナオミは、つい驚いてしまったのですが・・・・気付きませんでしたか?
ここで明らかにされた、大変貴重な情報・・・自分が『マエストロの魂を封じた宝珠』と・・・
地元、ラー・ジャの“聖女”の名が、この『マエストロ』と同じ名であること・・・
それを、敵方であるはずの、カ・ルマに提供したことを、いわないでいたのを――――
でも――― シホから得た情報を携え・・・ナオミは、次の目的地へと、翔んで行ったのです・・・・
そして、そんな彼女を見送り―――― こんなことをポツリと洩らす・・・黒き女は――――〕
シ:(ふぅん―――・・・そうか、あいつがようやく動き出したか・・・・)
これは・・・こっちものんびりとは、してられないようだねぇ――――(ニヤリ)
〔自分が所属している、組織のリーダーをも向こうに回し・・・・
これから、何かをなそう―――― と、している、彼女は、一体何者なのでしょうか・・・・。〕