【補章U−4―――『九章』;軍事国家】
≪一節;“最強”を自負する国≫
〔その国は――― 7つある列強のうちで、最も強力な軍隊を有する国―――
だが、しかし――― この国が、ガルバディアの中心になり得なかったのは、なぜか・・・
その理由の一つには、この国が興された経緯にもあるといいます。
では、その経緯とは―――・・・
この国が興された、5,000年前より以前、既にガルバディア大陸の中心を担っていたフ国・・・・
そのフ国の王家より分かち―――そこから独立した・・・・
その、分家筋の者は、この地方の豪族の娘を娶(めと)り、その豪族に成り代わって、その地方一帯を制圧した・・・
その国名こそ・・・・
―――ヴェルノア公国―――
そう―――・・・この国と、フ国とは、その源流をさかのぼれば、一つの血筋だったのです。
ですが・・・その道は平坦ではなく、いわば仲違いをしていた時期もあったようです。
それはいつの頃か―――・・・それは、今より三代前の王の頃より・・・・
そして――― 今、現在より先代・・・・迦邇旛(カジバ)=トライローキャヴィジャヤ=ヴェルノア の治世の頃、それは一層、色濃く顕われ・・・
この王は―――気性も激しく、唯我独尊的な人物であり、その野心もまた人一倍だった・・・・
つまりは、フに成り代わり、自分と自国が、この大陸の盟主たらん事を慾していたのです。
――――が・・・それは謀反たらん事よ・・・と、実の娘=公主=から諫められ・・・・
その手によって監禁・幽閉、政権を取り上げられてしまい、今に至る・・・と、いうところのです。
そう―――ですが、しかし・・・
このことは決して他国に漏れてはいけない事・・・一国の国主の交代劇が、こんなにも強引に行われていいはずもなく・・・・
ですが、周囲には、“先代の王は、病床に就いており、公主が代わって摂政となり、政治を鑑ている”と、吹聴したのです。〕
そして今――――
この国に、一石を投じようとしている者が―――――
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公:よし――― では、明日の亢(こう)の刻<午後12時前後>までに布令を出しておくように―――・・・以上―――!
武:あの・・・公主様。
公:うん・・・? なんじゃ、阿智奈
阿:(阿地奈=ハリティ=ヘプバーン;この国の執金吾(しっきんご:首都の治安を護る役職の長))
――――は、実は・・・(ごにょ、ごにょ)
公:―――なんと?? 関所破り・・・じゃと申すのか?!
して・・・その者は、今どこへ・・・
阿:こちらに捕らえてあります。
〔午前中の討議の終了を前にして、公主の耳に入ってきた、或る不届きな事・・・
=関所破り=
では、どうしてこれがそんなにも重大であるのか・・・・
それは、この頃の『関所』というものの役割にあったのです。
その役割とは―――・・・
国に出入りをする際に、武器の横流しや、その国ならではの特産物(塩とか米とか)の流出を防ぐ・・・
と、そういったことの水際の防止策でもあり、
ひいてはそれが、内乱の勃発の抑制や、影ながらの他国の侵入を防ぐ効果も持ち合わせていたのです。
それであるが故に、関所を破る事が、いかに重罪か・・・・ご理解いただけたことと思います。〕