≪三節;“公主”と“罪人”の、意外なる関係≫
〔そして――― 重々しく施錠された、牢獄の扉を開けると・・・・
そこにいたのは、ただ正面をみすえ・・・・公主が来るのを待ち構えていた、かの罪人・・・・
すると―――??〕
公:(ガバッ――!)真に―――申し訳ございません!
あなたであると知りおきながら・・・縛につけるような屈辱に合わせてしまうなど・・・
もはや―――私の罪、万死に値します―――!!
〔なんと―――・・・第一に驚いたことには、一刻を預かる公主様が、その額を地べたにつけ、まるで平蜘蛛の如くに姿勢を低くし・・・
その罪人に対して謝っていたこと―――
だが―――・・・一方の罪人の口からも・・・こんな意外な言葉が・・・〕
犯:いいのよ―――・・・私はそんなに気にしていないから・・・
それより、早くここから出してくれない?
公:あ―――・・・はい、本当に・・・申し訳ありません・・・・
=副長:鵺=
鵺:いいのよ・・・カケス。
〔そう―――・・・誰あろう、この二人こそ禽の一員・・・
その一人は――― 南回りで、ヴェルノア入りした、『鵺』こと、ユミエ・・・
そして、もう一人は―――― 二年ほど前からヴェルノア入りし、そこの施政者“公主”に成りすましていた・・・『カケス』こと、
ルリ=オクタ=ガートランド
カケスとは――― スズメ目に属する小鳥で、特徴としては、よく他の小鳥の囀(さえず)りを模するという・・・・
そう・・・現在の、この『公主』のように・・・〕
ル:(ルリ=オクタ=ガートランド;21歳;女性;その容姿を自在に変えられることから、『影武者』の異名をとる。)
さ―――・・・早くここから出ましょう。
こちらに、ここの国の女官の服がございますから・・・・着替えて下さい。
ユ:(コク・・・)分かったわ―――
〔そして、『カケス』ことルリは、懐に隠し持っていた、身代わり用の傀儡を組み立て、
ユミエの着ていた服に、その上から布を包ませて目立たなくさせた上で、
二人して、宮城の公主の部屋へ――――と、逃げ込んだ模様です。
そして―――――〕
ル:(ふぅ〜・・・)それにしても・・・少しあせりました、あなた様が、関を破るなど・・・・
ユ:・・・・・・。
ル:あの・・・副長? ああ―――ここなら大丈夫です、公主本人のプライベートな空間ですので・・・
完全な防音を施されていまして、多少騒いだくらいでは分かりません。
ユ:そう、それならいいわ―――
ル:それにしても・・・・うまい手を考えたものです。
あえて罪人となる事で・・・とは―――
ユ:でしょう?! お蔭で、4日は短縮できたのよ?
ル:そうですよね―――・・・南回りで、サ・ライのシャルナから、ここアルル・ハイムまでは、通常の人の足だと一週間はかかりますから・・・
そこを、たった3日―――ですからね・・・。
ユ:それよりも――― ねぇ・・・いつまでその姿と声でいるつもり?
私としては・・・『公主様』とお話しているようで、話しにくいんだけどな―――
ル:ああっ――――これは失礼しました・・・
―――シュン・・・―――
ル:・・・・これで・・・いかがですか?
ユ:ふふ・・・それそれ、これでようやく仲間内として話すことができるわ。
ル:ふふ・・・・これは少々耳が痛いですね。
〔そう・・・ここは公主本人のプライベートな空間・・・それゆえに、声を大にしても、多少では漏れないような処置がなされていたのです。
それを知ったことで、ユミエもひと心地つき、彼女達の本来の関係・・・上司と部下に戻ろうとしたのですが―――
ユミエが指摘したように、未だルリは“施政者”である『公主』の姿容を模しており、
そのことに気付かされたルリは、片手で顔をなぞらえただけで、元の姿――――
赤紫の頭髪に―――、スカイ・ブルーの瞳――――
に、戻ったようです。〕