≪四節;彼女が、留まりたがる、その理由≫
ル:ところで副長――― お見かけしたところ・・・あなた一人のようですが?
ユ:ええ、そうよ、梟は北周りで・・・そして私は、南回りをとっているの。
ル:お頭が―――?! しかし、“北”といいますと、カ・ルマの鴉からですか?!
ユ:そうだけど・・・?
ル:・・・・心配、ですね―――
ユ:え? どういう事?
ル:はい・・・実は―――
私は公主に成りすましているので、各列強からの情勢が、手に取るように分かるのです・・・・
が―――かのカ・ルマのなしようは・・・このところ目に余るものがあります。
ユ:―――・・・・。
ル:そして――― その影で暗躍している、ある者の噂も・・・・
ユ:ちょっと―――あなた、仲間を疑っているの?
ル:そうは言いますが――― その、陰で暗躍している者の特徴・・・
灰褐色の髪と言い、灰色の瞳と言い、顔半分を黒く薄い布で覆っていることと言い―――
鴉の・・・・シホそのままなのですよ?!
ユ:・・・・・。
ル:それに―――・・・鴉だけは、私達とは違う・・・
彼女は、我等と出身を異にしながらも、タケル様の命により禽に配属された・・・・
しかも、自ら希望(のぞ)んでカ・ルマ行きを択ぶなど・・・・
私には、あの者に二心あるのではないかと、心配でならないのです。
ユ:・・・・もう、よしましょう・・・・。
ル:えっ―――?
ユ:成る程・・・確かに、私もシホの総てを信じているわけではないわ。
でも、今は仲間を疑うべきではない、それは諜報を生業としている者にとっては、最も忌むべき事よ。
〔ルリは・・・公主に成りすましている者は、かの元凶の国、カ・ルマに潜伏している者の危険性を説いたのです。
なぜならば、『鴉』こと、シホ=アーキ=ガルテナーハこそは、只一人、自分達六人とその出身を同じうしておらず、
仲間内でも、素性は分かってはいなかったのです。
でも・・・禽の副長『鵺』ことユミエは、そのことを・・・・仲間を疑うということは、忌むべきものだ―――と、禁じたのです。〕
ユ:(ふ・・・ぅ)まあ・・・いいわ。
ところで――― あなたも分かっている事、だろうと思うんだけど・・・・
ル:残念ですが――― それはできません。
ユ:そう・・・やっぱりね。
あなたが私と一緒に行っちゃう・・・・と、言うことは―――
ル:ヴェルノア公国に公主不在―――が、他の列強に知れ渡るということですからね。
事実、この国は彼女一人で保っているようなものですから・・・・
ユ:それに―――・・・7つある列強の中でも、一番の軍事力を誇る大国の・・・・
しかもその要であり、舵取り役の本人がいなかった―――と、なれば、ヴェルノアという一枚岩にひびが入り・・・
ル:たちどころに瓦解――― そして、割譲・・・・ですか。
〔そして本来の任、『各列強に散っている、同志達を集める』に、移るのですが、
今までを見ての通り、ルリは公主に摩り替わっており、ヴェルノア公国の家臣をしても、その目は欺かれていたのです。
でも・・・今回の任を実行し――― ルリが・・・ヴェルノア公国公主の姿をした者がいなくなれば―――?
それは、推して知るべしてあったことでしょう。〕
ユ:あぁ〜あ・・・またダメか・・・・
ル:申し訳ございません・・・・私も、このような身でなければ・・・・
ユ:それは言わないで―――・・・あなたが公主の姿をしている・・・・それだけで、各国のパワー・バランスが保っていられるのだから・・・
ル:ありがとう―――ございます・・・・。
それで、一緒に行けない代償といってはなんですが――――
ユ:・・・・これね。
確かに預かったわ、あなたが公主の姿で、苦心して集めた情報(モノ)・・・・。
ル:よろしく、お願いします・・・。
〔こうしてユミエは、公主の姿をしているルリに別れを告げ・・・・アルル・ハイムにあるマーヴェラス城(別称:威風堂々)を後にしたのです。〕
ユ:はあぁ〜あ・・・こりゃ責任感じちゃうな・・・だって、今まで全部ダメだったものね・・・・
マキの奴に知られたら、なんてイヤミをいわれるか・・・・
〔説得に失敗し、仲間の一人も連れていないユミエ・・・・いうまでもなく、ひどく落ち込んでいるようですね。〕