≪五節;憂さ晴らし≫
〔それはともかく、ひとまず気を取り戻して――――
ヴェルノアの国境を越えて、フ、ヴェルノア、ハイネス・ブルグを結ぶ交通の要衝の地であり、
かつてはその地の利権を巡って、争いの絶えなかった ベルゼモール地方 に差し掛かった時――――
突如として、衣を引き裂くような女性の声が・・・・〕
娘:きゃ―――――っ! いや―――――っ! 誰か・・・誰か助けて〜〜〜!
ユ:(はっ?!)女の人の・・・・声? あっちからだわ・・・・行ってみよう。
〔その地は――――幾度となく合戦が行われていた、古戦場でもあるという・・・・
それであるがゆえに、そこで斃れた兵士達の骸もそのままに放置されており・・・・
だということは――― そう・・・そこは、いうなれば霊魂などが集まりやすい地点であり、
もう少し分かりやすく説けば、人外の者達がうろつきやすい場所でもあったのです。
そう――― 今の叫び声は、間違いなく地元の娘が、屋外にて妖魔の類に襲われていた――――と、いうこと・・・
それを見たユミエは――――・・・・〕
ユ:とぁ――――っ!
ど・ゲシぃ――――☆
ゴ:あだ〜〜〜っ!??
オ:や―――・・・ヤロウ! なにしやがる!
娘:あぁ・・・・あなたは―――??
ユ:しっかりつかまってなさい―――跳ぶわよ・・・・
娘:(え―――・・・?)
ユ:はっ――――!
〔ユミエは―――― 鵺は、女性といえど、人一人を抱えて跳躍した・・・・
そして、近くの木の枝に音もなく着き、それから枝から枝へ・・・と、跳び継いで、かの妖魔の者達と一定の距離を置いたところで・・・・〕
ユ:・・・・・。
娘:あ・・・あの、ありがとうございます。
ところで・・・あなたは??
ユ:しっ―――! 静かに・・・
娘:(う・・・っ!)
ユ:(・・・動きは緩慢・・・・だけど、着実にここに追いついてきている――――
もしかして・・・匂い??)
(くん・・・)違う・・・私じゃない・・・だ、とすると―――
ねえ、あなた・・・・こんな危険なところで、ナニをしていたの?
娘:えっ―――? わ・・・私は、フレグランスになるお花を求めに・・・・
ユ:(なぁる・・・・)ゴメン、ちょっとそれ――――借りるわね。
それと・・・ちょっと痛いかもしれないけれど・・・・我慢してね。
娘:えっ?ど・・・どうし――――
ど・・す・・・
娘:て・・・・(ガク)
〔ユミエは枝渡りで、今の木の枝にいたのですが・・・それでも執拗に追ってくる妖魔達に、匂いで追ってくるのでは―――と、推察し、
一緒にいる娘に、どうしてこんなところにいるのか・・・・の理由を尋ねてみれば、果たして――――
かの妖魔達は、彼女が採取していた花の香りを頼りに、ユミエ達の後を尾けていたのです。
そこで――― ユミエが打った手とは・・・
その花を、自分が代わりに持ち、娘を軽い当て身で気絶させて、木の幹に括りつけたのです。〕