≪十章;“花”の宿将≫

 

コンコン―――☆

 

将:どうぞ―――・・・

レ:どうも、失礼します。

 

セ:(セシル=ベルフラワー=ティンジェル;22歳;女性;この国の“武”の要、“雪月花”の『三将』の、“花”を宿とする。

  佩剣は『ツヴァイハンダー』、銘は<イクセリオン>。(尚、この物語に出てくる『カイン』は、この人の実兄。)

  ああ・・・これは、レイカさん。

  どうかしたんです?

 

レ:はい・・・実は――――新たに入隊希望者がいまして。

ナ:初めまして―――アタシ、ナオミ・・・って言います。

  宜しくお願いします―――!

 

セ:ふぅ〜ん、ナオミさんね・・・これからも頑張ってね。

 

ナ:(・・・って)え??もう終わり?!

セ:そうよ―――何か期待してた?

 

ナ:い・・・いや―――そういうわけではないんですが・・・・

レ:実はね、あの杜の主が目覚めてくる周期だから〜・・・って、それで皆警戒しているの。

 

ナ:あの杜の―――“主”!? んで・・・“周期”?!

 

セ:・・・そう、その主なる者は、数百・数千という年月を生きてきた吸血鬼で、

  目覚めてくる『周期』というものがあるんだ―――って、うちのとこの天文官が言っていたわ。

 

ナ:(吸血鬼=ヴァンパイア・・・)ところで―――その・・・“主”?

  起きてまづ何をしよう・・・って―――

 

セ:うぅ〜ン・・・まあ、伝承の通りなら、うら若い娘を攫って、更なる長寿を手に入れる――――だとか??

ナ:(それだ!!)じ・・・じゃあ―――あの熊狗は・・・

 

セ:熊狗ですって―――?!! それを・・・どこで??

ナ:・・・それが、この国の国境近くで―――それで、妹がそいつ等に攫われて―――

 

セ:国境・・・もうそんな近くまで―――!!?

  ・・・分かりました、では私の配下の軍を動かせましょう、それでいいですね。

 

ナ:えっ―――で、でも・・・攫われたのはアタシの妹で、あなたには何の係わりも―――・・・

セ:・・・でも、知らん顔しているのも忍びがたいわ――――

  それに、あの怪異の杜の従者が相手とは・・・・不足はないわね。

 

  ――――セシル、これより・・・参る!!

 

 

レ:・・・・お頭―――いいんですか?あんなことを言って・・・

ナ:・・・・アタシは、別にウソを言ったつもりはない―――

  それに、あたしらは、血の繋がった“姉妹”(きょうだい)も同様じゃないか・・・。

 

  それに―――もう・・・あんな思いをするのも沢山なんだよ!!

 

レ:お頭―――・・・あなた、あのときの・・・あの人の事を―――まだ・・・・

ナ:・・・・ここに来る途中―――あいつにそう言われたよ・・・。

  うちらの中で、一番年下のマキに・・・正直、堪えたよ――――

 

レ:―――――・・・・。

 

 

〔それより先は、『禽』の頭目である者の口からは、なにも出なかった――――

それは辛い事だった・・・と、その集団の誰もが認識していた事だったから・・・。

 

そして―――彼女達は、自分たちの得物を片手に、羽ばたいて征ったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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