≪十一節;ふかふかのベッドの上で―――・・・≫

 

 

〔その一方―――こちらは・・・目覚めると、自分の知らないところで、

ベッドの上に寝かされているのを認識するマキが・・・〕

 

 

マ:う・・・うぅ〜〜ン!

  あ・・・あれ??こ・・・ここ、どこだ?!! それより、何でアタシ、こんなふかふかの御布団の上で・・・寝てんだ?!!

 

  ゆ――――夢・・・(ぎゅぅぅ〜)あいちち――――ゆ、夢じゃなぃい?!!

 

 

〔一体―――いつから眠っていたのか・・・自分の顔に射した陽光で、目が覚めたマキ・・・

すると、おそらくこの家屋敷の召し使いなのでしょうか―――そんな風な女性が、部屋に入ってきたのです。〕

 

 

召:ああ・・・これは、ようやくお起きになられましたか。

  どうやらぐっすりとお休みになられたようですね―――

 

マ:え??あ、うん―――つか、あんた誰??それと・・・ここどこ??

 

 

〔しかし―――この女性からは、返事はなく・・・ただにこやかに微笑んでいるだけでした。

 

そして、彼女の口からは・・・〕

 

 

召:昨晩は飛んだ目に遭われましたね―――・・・。

  ここのお館様が、定期健診をずっと拒み続けてこられて・・・それで、挙句の果てに脱走を図ったものだから、

  私どもも焦りまして・・・・

 

マ:(ほぇ〜・・・)・・・・ンじゃ、ナニ? ここ――――でっかいお屋敷なわけ??

召:え?ええ〜〜―――・・・でも、『お屋敷』というよりかは、『お城』なのでして・・・

 

マ:エェ〜〜――――っ!!お・・・お城?!!

召:(あ・・・っ、まづいこと云っちゃったかな・・・)

 

マ:うわわ〜〜〜―――すごいんだじょ〜〜〜!

  今、アタシ・・・お城にいるんだ〜〜〜!ああ・・・・これが夢なら覚めないで〜〜〜!!

 

召:(あっら〜〜―――・・・・やっぱ、どこからどう見ても、あの方にクリソツだわ・・・)

  そ―――・・・それでは、お召し換えの方など・・・いかがなものでしょ?

 

マ:ええ〜〜―――っ?!うっわぁ―――カンゲキ!!

  ホント、夢にまで見た、あの動きにくそ〜な、フリフリのついたドレスなんでしょ??

  あれ――― 一度でいいから着てみたかったんだよなぁ〜〜。

 

召:(あっはは〜〜―――・・・この人、私にのされてここに連れてこられたんだけど・・・

  まぁいいか、楽しんでいるようだし・・・。)

 

 

〔その召し使いは、昨晩災難のあったマキのことを、つぶさに語り始めました。

しかもそれは、人づてに聞き入れたものではなく、むしろ火花を散らしあった当人同士のように―――

 

それもそのはず、彼女こそ“ソシアル”と名のついた、あのときの熊狗の片割れだったのです。

 

でも・・・マキはそんなことは意に介さず―――と、云ったところか・・・

いや、むしろ彼女は、今、自分が絵本などで見たような、宮廷調のドレスや、絢爛豪華な調度品などに目が行き、

とてもここが、“吸血鬼”の『お城』・・・<ヴァルドノフスク城>であるとは、気付きもしなかったようです。

 

 

そして―――ソシアルは、あの時一緒にいた、もう一匹の熊狗・・・“ヘラィトス”と名のついた者がいる部屋に戻り・・・〕

 

 

へ:(ヘラィトス;8432歳;♂;見かけは、物腰柔らかな紳士的青年・・・ではあるが、その正体は、『熊狗』である。)

  いかが―――でした・・・。

 

ソ:(ソシアル;7828歳;♀;一見すると、どこにでもいるメイド風の女性・・・でも、その正体は、『熊狗』である。)

  はぁ――――・・・それが、楽しんでいらっさるご様子で・・・。

 

へ:それは良かった―――(ニコ)

  それより・・・あのお方の形跡は・・・?

 

ソ:はぁ・・・それが―――つかまされたのがダミーでして・・・

へ:(フフ・・・)あのお方も、困ったものですよね―――だんだんと逃げ方が巧妙さを増してくる・・・。

 

ソ:笑い事じゃ済まされませんよぅ―――(ぷぅ)

へ:おっと―――これは失礼・・・。

  ――――と、なると・・・あの方法しかないわけですが・・・・・

 

ソ:“また”ですかぁ〜?! 思ったより、結構経費かさむんですよねぇ〜〜―――アレ。

 

 

〔それは―――伝承を信じている者が、この光景を目の当たりにしたならば、まさに目を疑いたくなるようなものでした。

 

それというのも、『吸血鬼』にしろ、魔獣の『熊狗』にしろ、

人間(ヒューマン)を喰い物にしていかねば、存続することすら難しい種族だと云われていたのに・・・・

 

それが、この二人は、人間であるマキの手当てをしてやり、宜しく匿ってやっていたのです。

それはナゼなのか――――  それは・・・・

 

 

そんなことよりも、この二人はあることから逃れるために、自分の『お城』を抜け出した、

自分たちにとっても、“主”である者をとッ捕まえるために、なにやら策謀を張り巡らせるようです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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