≪六節;熊狗の“主”≫
〔その一方で―――こちらの方では・・・〕
♂:{そちらの方は・・・どうです?}
♀:{この辺りで、匂いの方は途切れているようですが・・・}
♂:{(ふぅ〜)全くもって、困った方だ―――
定期健診を受けるとなると、決まって逃げ出すのですから。}
♀:{申し訳ありません・・・私がちょっと目を離した隙に―――}
♂:{(ヤレヤレ・・・)ん―――? おや?あの者達は??}
♀:{・・・どうやらヒューマン(人間)のようですね、こちらに来るようですが―――}
♂:お前たち―――何者だ・・・。
ナ:(ナニ?!人の言葉を解するのか?! かなり厄介そうだな・・・。)
私たちは、元々ここの村の人間ではないが・・・一泊の恩義がある。
この村に、もし災いが降りかかるなら、それを払うのが“礼儀”というものだろう―――?
♀:ほほう―――これは面白いことを・・・この我等が“災い”?
どうしてそのようなことがいえる―――
マ:どうにもこうにも・・・とっくにあんたらが探しているの、ここにはいないんだってばよっ―――☆
♀:なんだと―――・・・おのれ!!
〜――グゥルルル――〜
♂:まぁ・・・待ちなさい―――
それで?あのお方を遠くに逃がすために、お前達が囮(デコイ)になって出てきているという事か・・・。
ナ:“そうだ”・・・と、したなら?
♂:・・・・フフ、フフフ――――中々に殊勝な心がけ・・・と、言いたいところだが、
一つ言っておこう、お前達はその対象を誤っている。
今―――我等が追っている存在・・・それがどういった者なのか、知っているのですか。
マ:(ヘヘン―――)あの・・・おかしな杜の奥からようやく逃げてきた、“仔猫”ちゃんだよっ―――☆
♀:こやつ〜〜―――・・・フザケる――――――――なッ!!
〜――ガウゥッ――〜
マ:(ヘヘへっ―――)そうでなくっちゃ―――!
ナ:バカっ―――!ナニをしてるんだッ!!
〔その者達は、以外にも人語を解し、操れる魔物だった―――
それゆえにナオミは、真正面から対峙せずに、適当にあしらって、あきらめてもらおう―――と、していたのに、
『禽』の内でも、血の気の多い=鵙=のマキには、それは伝わらなかったらしく、
とうとう向こう側の一匹と、火花を散らしてしまったのです・・・。〕
ナ:(バカが―――勝手に向こうさんとおっぱじめやがって・・・
だけど、残ってるこの一匹・・・あちらからは仕掛けては来ないようだが・・・)
♂:――――・・・なぁに、心配しなくとも・・・こちらからは何もしない。
ナ:(こっ・・・こいつ!!人の―――アタシの心が読めるのか?!!)
♂:なに・・・なんとなくですがね―――
それに、こういう状況に追い込まれたときの、あなた方ヒューマンの出方には二通り・・・
遮二無二、私に喰って掛かるか―――あるいは、今のあなたのように、こちらの出方を伺ってくるか―――・・・
ナ:くぅっ―――!(チャッ―――☆)
♂:そう構えなさんな―――いうまでもなく厄介なのは、今のあなたのように
“機に臨みて変に応ず”
タイプなのだから・・・・な。
〔けれど―――残りのあと一匹の対応の仕方に、ナオミは戸惑いました・・・。
―――と、いうのも、妖魔・魔獣・人外の者・・・と、いえば、見境いもなく人間=ヒューマンを襲ってくるものだ・・・と、
そう認識をしていたのに・・・
それが、どういったことか、この熊狗に限っては、ナオミとマキをヒューマンと認識をしていながら、
決して自らが襲ってこようとしなかったのです。
その一方―――この家に残された、件の娘は・・・〕
娘:(ちっ―――)もうここまで嗅ぎ回ってくるとは・・・ついてないねぇ〜〜。
老:(えっ・・・?)あ―――・・・あの、娘・・・さん?
娘:(ぅん?)ああ――――すまなかったね、こっちはあんた達まで巻き込もうってつもりは、毛頭もなかったんだけどね。
私の居場所がばれちまったら、元も子もない、ここを出てくことにするよ―――
老:あ・・・あなた――――様は・・・・もしや??
娘:おおや―――気付いちまったかい?
だけど、そこから先は余り詮索はしないことだ・・・それこそが長生きの秘訣だよ―――
お婆ちゃん♡
パ☆ちん〜―――
〔その娘は―――かの追っ手の熊狗が来訪してきたころから、娘らしからぬ言葉遣いになっており、
そのことに、この家の家主でもあるこの老女は疑問を抱き始め―――・・・
やがてその疑問が“確信”へと変わったとき、この怪しき娘は、指を一鳴らししたあと―――
今まで・・・この場であった出来事を、総て忘れさせてしまったのです。〕