【補章W――――『十六章』;黄泉返りし、不屈の闘志(士)】
≪一節;畏るるべき、ある事実≫
〔この街―――夜ノ街の、その南門で・・・・
古えの畏るるべき龍の戦士が、敵―――カ・ルマ軍の計略により、斃され――――・・・
また、同じく北門にて、ギルド女頭領―――婀陀那が、狡猾なワナ“陥穽”により、敗北死(??)した―――・・・
と、同刻―――
やはり、そうなる事が宿命であったのか、かの竜の戦士と同様にして、古えに語り継がれてきた、ある存在―――
その・・・もう一つの勢力の末裔が、夜ノ街の南門に近付いてきた機―――・・・
そこにいた非人道的なる者達は、思い知らされる事となるのです。
ナゼ―――『ヴァンパイア』と、『ハイランダー』が、7万年もの昔に、
当時、皇として君臨されていた女禍様に、抵抗してきた勢力から畏れられてきたのか――――を・・・・〕
グラッ―――
ズドド―――――ン・・・
兵:ひょっほ――――っ!見ろよ!や〜―――ッたぜ!!
兵:あぁ―――オレ達だけで、あの巨いのをヤったんだぜ??
兵:オッかねェヤツだったけど、大人しくなっちまえば、てぇしたことないもんだなぁ?!おいっ―――!!
キ:・・・・・。(ビクっ―――ビクっ―――)
〔己れの身に、唯一仇なせる存在・・・・『ドラゴン・スレイヤー』を、幾つも喰いはぜらせながら、耐えていたものを・・・・
最後の一投を、胸に受けたのが流石に堪(こた)えたのか・・・その巨体を支えていた四肢がぐらつき、
最期には、大音響とともに、大地に崩れるように斃れてしまった、蒼穹の竜の戦士―――キリエ・・・
そして、もはや息絶えてしまった彼女の亡き骸に、穢らわしい存在が群がり始めたのです。〕
兵:へっへへへ――――・・・・おっ?!なんか、今、動いたようだぞ?
兵:ひょっとすると、生き返るんじゃねぇのか??
兵:だとすると――――厄介だぜ・・・その頭、ブッ潰して、止めをさしちまおう――――
〔目は完全に白目を剥き―――、口腔や鼻腔からは夥(おびただ)しいまでの量の吐血――――
斃れているその躯からは、士気どころか、生気が感じられなくなりつつあるのに―――
その、非人道的なる者達は、この上にまだ『止めをさす』などと、囃し立てだしたりしたのです。
――――が、しかし、その一部始終を見ていた・・・イヤ、見てしまった、ある小さな存在によって、
その暴挙は止められようとしていたのです。
そして、その小さな存在は、自分を庇うために、幾つもの武器を、その身に受けざるを得なくなって斃れてしまった、
蒼穹の竜の戦士の前に立ちはだかり、この非人道的なる連中に言ってのけたのです・・・。
そして―――それを見つめる、眼差しがありき・・・・〕
子:や・・・やめろ―――!キリエの姉ぇちゃんを、これ以上傷つけるのは・・・ヤメロ―――!!
兵:あん――――っ?!ぁんだぁ?このガキ・・・・
兵:おぅおゥ、コラコラコラ―――お前ぇはよくみてなかったんか?
こいつはトんでもねェ化けもんで―――オレ達ゃそいつを退治してやったんだぜ―――?
兵:おおよ―――おおよ―――、感謝こそされ、非難される覚えはねェぜ?!
子:うぅ・・・うるさいっ―――!
お前達は・・・ボク等の住んでるところを襲いに来たじゃないか!
それに・・・ボクの母ちゃんも、父ちゃんも・・・隣りのミヨちゃんまでも、殺しやがったくせに――――っ!!
それを・・・こんなボクの無念を、ボクに成り代わって、キリエの姉ぇちゃんがとってくれてたのに・・・・
それを、それを・・・・・またお前達が――――ちくしょぉ・・・・お前達なんかいなくなっちまえ―――!!
〔その子供は、危ないところを蒼穹の竜の騎士に助けられ、近くの門の陰に隠れているよう、言われた存在なのでした。
しかし―――このあとの始終を、この幼い存在は、幼い存在なりに、よく見ていたのです。
たとえ―――自分達“人間”と、容姿貌(ようしかたち)が異形といえども・・・
小さくて非力な自分に、安全な場所に避難しておくように言ってくれた存在と――――
同じ“人間”でありながらも、自分の両親や、近所の仲良しのお友達まで、その悉(ことごと)くを奪ってしまった者達と・・・・
そのどちらに正邪があるのか―――・・・を。〕