≪三節;化狼vsトウテツ≫
〔では、もう一方のマキのほうは―――と、いいますと・・・〕
鵙:―――・・・。(←死んだフリ)
グルルル―――ゴルルル・・・・
鵙:(ひょえぇ〜〜――はやくあっちいってよ〜〜
こんなあたしなんか食っても、美味しくねぇぞ?!)
マ:(クン―――スン・・・・)
鵙:(うっへ―――匂うなよ・・・ぴゃ〜ン、誰かたしけてぇ〜〜―――☆)
ス―――・・・
鵙:(あ・・・あれ??)
〔実に奇妙だったのは、かのヴァンパイアが、その名を=マダラ=と呼んだ魔獣・トウテツの行動。
このときマキは、マダラをやり過ごすべく『死んだフリ』をしたのですが、
大方の予測に反し、この魔獣は、事もあろうにマキの隣りに座り込んでしまったのです。〕
鵙:(う゛ひ〜〜ヘタな考え休むに似たり―――って、このコトかぁ〜?!
このワンちゃん、アタシの隣りに居座っちゃっただにヲ゛〜〜―――!)
〔嗚呼・・・これで百年目か―――と、そう思っていたマキなのですが・・・
しかし、別にこの魔獣は、マキをどうにかしよう―――・・・と、いう風でもなく・・・
いえ、それどころか―――〕
〜〜――ぐるるる――〜〜
狼:{おい―――そこの・・・その獲物、我等によこせ・・・}
マ:{フン―――・・・何かと思えば化狼(けろう)か・・・魔狼・フェンリルにもなれず、
ましてや普通の狼からもはぐれてしまったハンパ者が―――}
狼:{ほざけ―――!我等は、そのヒューマンを啖うて、ヒューマンの能力を手に入れるのだ!!}
マ:{ナニを戯(たわ)けた事を―――・・・ヒューマンを食べても、ヒューマンの能力は手に入りはしない、
そんなことも分からぬとは・・・・所詮はケダモノという事か・・・。}
狼:{う・・・うるさいっ―――!我等に―――}
鵙:な・・・なにワケのわかんないこと言ってんだぁ〜?(ひょこっ)
マ:・・・・この者達は、今からお前さんを啖らう算段をしているのだ・・・。
全く―――厄介な事をしてくれる。
鵙:(い゛っ?!!)ひ・・・人の言葉が判んの??!うっそぉ〜〜―――!!
つか、今からアタシを食べる算段〜??
や・・・やめときなって―――アタシってば、筋張ってて美味しくなんかないヲ゛??
マ:・・・・・。
(フッ―――)面白いヤツだ・・・ヒューマンの中にも、こんなお気楽な者がいたとは・・・
鵙:お―――“お気楽”・・・・って、そいよか早くここ逃げ出そうよ!!
マ:それは―――できない・・・。
鵙:え゛〜〜〜どうして?!!
マ:ここは合流地点・・・ゆえに私がここにいないと、あの方が困るから・・・
だが―――まあ、安心するがいい・・・こやつ等程度ならば、私でも十分に対応できる。
〔そう・・・その魔獣・トウテツは、ヒューマン(人間)であるマキに、危害を加える事はせず・・・
逆に、マキを捕食しにきた化狼たちを向こうに回し、彼女を守ってやっていたのです。
しかし―――やがて、向こうの方から痺れを切らし・・・〕
狼:{何をそこでごちゃごちゃとやっている―――!
さっさとそのヒューマンを渡して、どこかへ去ね!!}
マ:・・・・・。(フン―――)
{渡さぬ―――と、言ったら・・・?}
狼:{知れたこと!キサマを斃すのみよ―――!!}
〜〜―――がうぅっ―――〜〜
〔マキとその魔獣を、亡き者としようとするため、一匹が襲い掛かったのですが・・・
その魔獣・トウテツの肩辺りから、突如として出てきた、蟷螂の鎌のようなモノに・・・
その化狼の一匹は、無残なまでの肉の塊と化してしまったのです。
それを見ていた仲間の化狼たちは・・・・〕
狼:{おっ―――おのれぇぇ〜〜〜・・・}
マ:{これでようやく分かったか―――私と、キサマらの格の違いというものが・・・。
まだ分からぬというのなら――――分かるようにしてやってもいいものぞ・・・(ギヌロ)}
狼:{くっ―――!覚えておれ!!}
マ:(フン・・・)他愛のない―――少し脅しただけなのに・・・
ん――――?
鵙:zzZZ・・・(スカ―――スカ―――)
マ:(フフ・・・)眠って―――しまったか・・・
〔仲間の一匹が無残な姿にされ、一度は憤ってみるものの―――
明らかにレベルの違う者を相手にするほど、化狼たちは愚か者ではなかったらしく、
これまた無様にすごすごと引き返していったのです。
こうして、一騒動が去り、マキのほうを見てみれば・・・・
なんとも無邪気な顔をしたまま―――彼女は安らかな眠りについていたのです。〕