≪二節;世の理(ことわり)

 

ア:その前に―――(ごそごそ)

  今・・・私が手に持っている 州公の印綬 ・・・。

  では、この手を離すと、この印綬はこれからどうなるでしょう。

 

ホ:(え・・・?)下に―――落ちる・・・よね?

 

ア:はい、その通り―――

  では、どうしてそうなるのか・・・判るかな?

ホ:えっ―――・・・

 

ア:(ウフフ・・・)それはね、元々この印綬自体の“重さの力”と、

この天体そのものに備わっている“物を引く力”―――が、作用しているからなんだ。

 

ホ:へぇ〜〜―――(キョトン)

 

ア:そして―――この水もその例に漏れず、“高い処”から“低い処”へと、流れてくる。

ホ:“流れて”〜〜―――・・・それじゃあ、あの山から?

 

ア:うぅ〜〜ン・・・『そうです』と、言ってあげたいけれど、それだけじゃ 正解 とはいえないね。

ホ:えっ・・・どうして??

 

ア:それはね―――・・・

 

 

〔それにはまづ―――“物体”が、『上』から『下』へと落ちる事象の説明を・・・

そのことを目で見てよく判るように、自分の持っている<州公の印綬>を落として説明するのですが、

幼い王子様には『重力』だとか、『引力』の事はまだまだわからない様子。

 

でも、根本的な原理というものを抑えていれば、少しづつでも判り易くなるだろうと思い、

そこから先については、今回は余り触れないようにしたのです。

 

 

そして次には、その“原理”を踏まえたうえでの、少し 地理 の混じった問いかけを―――・・・

でも、さすがに『河』の事は、いくら幼い王子様でも知っているから、さらりと流すのかと思われたのですが・・・

 

ここでアヱカは、この二つの<大河>の成り立ちを話すこととなったのです。〕

 

 

ア:それより、この大陸に流れている大きな『河』の事は知っているかなぁ・・・。

ホ:大きな・・・川?それ―――って、“レテ”と“アーケロン”のことでしょ?

 

ア:はい、正解。

  ではその二つの河は、それぞれどこへと流れているんだろう?

 

ホ:エェ〜〜ッと・・・確か―――『レテ』のほうは北のほうへ・・・

  それで、『アーケロン』のほうは・・・南の方―――だったっけ?

 

ア:はい―――正解。

  でもね、そのレテとアーケロンも、もとの源流を辿れば、こんなせせらぎのような小さなものなんだよ。

 

ホ:えっ―――あんな大きなものでも?

 

ア:そう・・・王子様でも知っている、あの二つの大きな河でもね、その源流を辿れば、一つの場所に行き着くんだ。

ホ:一つの―――・・・場所?

 

ア:そう・・・。

  (ス―――・・・)ここから――――・・・遥か西の方角に、ヴァーナムという山脈がある。

  その山脈の・・・北側は フェルペル と言う処―――そして、南側からは ラーゲル と言う処・・・

  この二箇所から、二つの大きな河の源は生まれているんだ。

 

  初めは―――このせせらぎのように細い一本の流れ・・・なんだけれどね。

  この大陸にある、様々な小川やせせらぎが合流し、そしてやがては一本の大きな河となっていくんだ・・・。

 

  そして―――出発点があるように、終着点も必ずある・・・。

  先程説明したように、山脈から起点を発したこの水の流れは、やがてはその終点たる『大海』へと臨む―――

 

ホ:『大・・・海・・・』??

 

ア:・・・うん―――

  今、王子様は、この大陸のど真ん中にある『フ国』にいる・・・。

  だからそれは知る由もないのだけれど・・・

この二つの川の流れは、王子様の想像もつかないような、大きく開けた場所―――

見渡す限り、真っ青な水が・・・その対岸さえも見えないほど、一面がそれで出来た世界―――それが『海』なんだ・・・。

 

 

〔始まりはごく小さかった―――けれど、その一本は、やがて様々な小さな存在と合流し、そして大きな流れとなっていく・・・

しかし―――その大河の存在も、やがてはそれよりも遥かに大きな存在・・・『海』へと辿り着き―――

その使命を終えるのだ・・・と、アヱカは教えたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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