≪三節;興味を持つ―――と、いうこと≫
〔そのことを、半分興味を抱きつつも、おぼろげながらに理解したホウ王子、
早速―――今日、アヱカに教わった事を、母であるリジュに話してみせたのです。
すると―――・・・〕
ホ:ねぇ―――ねぇ―――母ァ様?
今日ね、お姉ちゃんに一杯いろんなことを教わったんだよ。
リ:ほぅ―――何をそんなに教えてもらったのじゃ・・・
ホ:えっとねぇ――――<中略>―――・・・とか、さ。
リ:(は・・・)な、なんじゃと―――??
『河』の事に・・・『重力』?『天体』??それに・・・『大海』???
ホ:うんっ―――! ちょっと難しいところとかもあったけれどさ、面白い話しだったよ。
リ:そ―――そうか・・・それは良かったの。
(ふぅ〜〜―――・・・む)
〔王子様は、母親である王后に、ほんの興味本位で、その日にアヱカから教えてもらった事を、(総てではないけれど)話してみせました。
けれども―――と、いうより、やはり・・・と、いうべきか、
リジュのほうでも、初めて耳にすることばかりに・・・少々戸惑いを隠せないようです。
だから―――なのか、翌日・・・ホウ王子よりも前(さき)に、太傅であるアヱカと会い・・・〕
リ:これ―――太傅殿・・・
ア:あ・・・これはリジュ様、いかが致したのでしょう。
リ:ちと、こちらに―――・・・
ア:はい・・・。(なんだろう・・・)
リ:実はの―――昨日・・・ホウが、『重力』だの『天体』だの・・・果ては『大海』だの―――と、
妾でも判らぬ事を言っておったのじゃが・・・あれはそなたが―――?
ア:あ、はい―――その通りですが。
リ:然様か―――・・・
そこでのう、余り―――妾でも知らぬような難しい事を・・・
ア:ああ―――その辺はご心配なく。
王子様も、政治関係の事とかを学ぶよりも、より興味のあることのほうを学んで頂きたい・・・と―――
ですから、昨日話しておいた、少々難しい事も、興味をお持ちいただけるだけでも―――・・・と、いうことなのです。
それでも・・・基本的なことは判っていただけた―――
大河も、元からああいった大きな存在ではなく、その源を辿れば、ごく小さな存在である・・・と、いうことを。
リ:―――――・・・・。(じぃぃ・・・)
ア:(えっ?)あの――――なにか??
リ:そなた―――・・・学者ではなかったよのう?
ア:(え゛っ??)い―――・・・一体何を急に・・・
リ:だとて―――ホレ、前(さき)の河の説明にしたとて、かなり詳細に・・・
妾とて、そこまでの事を科挙では習わなかったのじゃからな??
ア:(・・・し―――しぃまったぁぁ〜〜!!)
あっ―――い、いえ・・・実はそのぉ〜〜・・・わ、私の故国に高名な学者が立ち寄りましてですね?その時に―――
リ:ほう・・・高名な学者とな? 何者なのか―――?
ア:えぇ・・・ええ〜〜っと・・・わ、私も何分にも小さかったので、その学者が誰か〜〜―――までは・・・
リ:ふぅ・・・む、然様か―――
まあ、余り難しい事は教えんで下されよ・・・。
ア:・・・はい、以後気をつけます―――
〔リジュには―――不思議でした・・・
多寡だか小国の・・・それも田舎の出だった女性が―――『大学』出身のリジュでさえ、聞くことすら初めてのモノを知っていることに・・・
しかも、たった一つの『河』の事を説明するのにも、的確で少しも的が外れていないことに―――
そのことに、頭の上に大きな疑問符を据え置きながら、そこのところを問い質すと、
なんとアヱカは、急にしどろもどろになってしまい、返答をするのにも実に苦しい言い訳のし放題・・・
ですが―――リジュは、そんな(苦しい)言い訳でも得心が言ってくれたのか、その場から去ってくれたのです。
そのあとで―――〕
ア:(はぁぁ〜〜・・・ヤレヤレ、どうにか誤魔化せたな―――)
<あの・・・女禍様?>
女:<ああ・・・ごめん、アヱカ・・・。
私も、調子に乗ったつもりもなかったのだけれど―――結果そうなっちゃったみたいだね・・・。>
ア:<いえ・・・それよりも、わたくしも初めて知りました・・・。
日頃―――見ていた・・・あのレテの河より、それよりも大きな存在があったという事を。>
女:<(ウフフっ・・・)そうかい・・・・>
ア:<でも・・・ひとつ気になることが―――>
女:<(ぅん?)・・・・なんだい>
ア:<『天体』・・・って、なんの事なのですか?>
女:<(あ゛っ!!)い・・・いやぁ〜〜その―――あ、あのね??
ほ、ほら・・・ここでも『天文』ってあるじゃないか、太陽の軌道や―――月の満ち欠け・・・とか、ね?(アセアセ)>
ア:<はぁ―――・・・そうですか・・・。
(でも、なんだか・・・凄く焦っていなさいますわよね?)>
〔なんと、今度はその存在を共有しているアヱカ本人から・・・
昨日、王子様に話し、アヱカ自身、最も興味が湧いた話題・・・『天体』―――
そのことを聞こうとしたとき、常日頃は、どんな事があっても沈着冷静なこの方が、珍しくも動揺を見せたのです。
それを怪訝そうにするアヱカ―――・・・でも、このときは、彼女もそこより先は深く追求しなかったのです。
――――が・・・・〕