≪六節;ある者の苦悩―――〔姉なる存在〕≫
〔しかし―――ここで何を思ってしまったのか・・・アヱカは、急にこんなことを口走り始めたのです。〕
ア:―――けれど・・・私たち人間は違う・・・この連鎖の中に入っているとはいえ、
とてつもない“大罪”を犯しているんだ・・・。
ホ:(えっ―――?)お・・・お姉―――ちゃん??
ア:こんな事を・・・考えた事があるかい?
ある種の生物―――例えて言うならば、“草を食ム者”がこの世からいなくなったとき、
それを糧としている“肉を食ム者”が及んでしまう行動を・・・・(ギュ)
ホ:――――・・・。(・・・どうしたの?お姉ちゃん・・・ちょっと―――怖いよ・・・)
ア:それはね・・・・“肉を食ム者”同志が、互いを啖らい合う『共喰い』という行動なんだ・・・。
ホ:え―――ぇえっ??!
ア:けれども・・・とは言っても、それはある特定の―――それも特殊な条件が揃って起こってしまうこと・・・
自然には起こりえないこと―――先程言ったように、自分たちが糧とするモノがいなくなってしまった時・・・とか、ね。
でも―――人間たちは違う・・・“肉”を食べ、“草”も食み・・・そして、それらを育む能力が備わっているというのに――――・・・
彼らは、主義主張が合わなかったり、気にそぐわない―――たったそれしきの理由だけで、同じ種属同士である『人間』を、
いとも簡単に殺してしまう・・・
しかもそれが<国家>レベルにまでなってしまうと、多くの人命を巻き込んでしまう『戦争』にまでなってしまう・・・・
ナゼ―――? <モノを考える> と、言う素晴らしい能力が備わっていながら、最も愚かしいと思える行為を・・・どうしてこうも繰り返し―――??
判らない――――私は・・・判らなくなってきたよ―――
―――姉さん―――
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〔それは・・・それは―――とても奇妙な光景でした・・・
今、とても難しい事を話してくれた女性は、顔を俯(うつむ)かせ・・・肩は小刻みに震えながら、
その真紅の眸からは大粒の泪・・・・しかも、拍子に出てしまった『姉』なる存在・・・・
そんなアヱカを、穢れのない円(つぶ)らな眼(まなこ)で見ていた王子様は、とても不思議に思ったのです。〕