≪四節;望まぬ援軍≫
〔それから――― 一週間が経ち、ペルテネローゼ付近で展開されている小規模な小競り合い・・・
しかもカ・ルマ側は、まともに向き合おうとはせず、投石や口の悪さなどでハイネスの兵の士気を削いでいたのです。
そして―――そうした術の事を、誰彼と云うことなく、皆一様にしてある名称で呼んだのです・・・
ベ ク サ ン シ オ ン
い や が ら せ
―――と・・・。
こうして、このやり口に辟易しているハイネスの兵・・・と、そこへ―――
新たなる味方の増援が、クレメンスの砦に送り込まれてきたのでした。
しかし―――・・・〕
セ:増援ですって―――??! ああ・・・良かった―――これでいくらかは持ちこたえる事が出来るわ。
リ:ところで―――その増援の軍を率いてきたのは誰なの?
〔ようやく―――こちら方面での苦戦が伝わったのか、待ち望みたる増援軍の到来・・・
そのことには、セシルやリリアはもとより、意外なる苦戦を強いられている兵士たちも喜んだのですが・・・
その喜びも束の間―――今回の増援の軍を率いてきた将を見るなり、愕然としてしまったのです。
なぜならば・・・〕
将:やあ―――待たせたね。
リ:え゛っ――――!!? こ・・・こいつ―――(親の・・・)
セ:ウソ――――・・・ そんな――――??!(七光り・・・)
イ:・・・あら―――どうしたの、あなたた・・・ち―――
(!!)ジュヌーン! どうしたの?どうしてあなたが、ここに??!
ジ:(ジュヌーン=トゥール=ガフガリオン;25歳;男;以前にも話題に立ち上った事のある、良家のお坊ちゃん。
これまでに、幾度となく『騎士検定』に落第した経験を持つ。)
どうした―――は、ないだろ?イセリア・・・。
ようやく―――ようやく受かる事が出来たんだよ、『騎士検定』に!!
イ:まあぁ〜〜♡そうだったの??♡快挙じゃなぁ―――い♡♡
リ:(う゛わぁ・・・通算87回目にして合格したよ・・・)
セ:(・・・と、いうより、87回も?? ほとんど―――出題傾向変わんない・・・っていうのに―――)
イ:(フフフ〜ン♪ ごらんなさぁい―――もう、これで私を貶めるものは存在しなくってよ?!)
あぁ〜・・・さすがは、私のジュヌーン―――♡♡♡
ジ:ああ―――ボクのイセリア・・・
〜♡いちゃ♡いちゃ♡〜
リ:(あ゛―――あ゛ははは・・・バ・・・)<士気低下↓>
セ:(バカップル―――成立・・・・・・・)<士気低下↓>
〔なんと・・・この増援軍を率いてきた将というのが、
以前からリリアやセシルの二人に、散々蔑まれてきたという、ジュヌーンその人だったのです。
しかも、この彼が今回の援軍に参加をした―――と、いうのも、
永きに渡り苦汁を飲まされてきた『騎士検定』に、晴れて合格したから―――と・・・
なにやら上の方でも動きがあったからに間違いはなかったようです。
それと―――また時を同じくして・・・一方のこちら、カ・ルマ軍にも、新たなる増援が到来したようです。
しかも・・・こちらの増援軍の将たる者は―――・・・〕
兵:ご報告―――! ただいまキュクノス様率いる2千が、到着した模様にございます。
ヨ:―――なんだと?! 魔将様御ン自らが?!!(しかし・・・たった2千だけ―――とは)
ョ:それにしても・・・どういった風の吹き回しなんだろうかねぇ。
ここいらの戦線では、快勝続き―――だったってのに・・・
ヨ:・・・まあ、ともかくお迎えしよう―――
〔この方面での、カ・ルマの増援軍は、たったの2千――――・・・
かたやハイネスの軍は、1万5千もの大増援だったのです。
ですが―――決定的に違ったのは、軍を統率する 将 の“質”・・・
そう―――こちら、カ・ルマ軍には、
これまでに快進撃を続けているのにもかかわらず、主力である 魔将 が顔を覗かせていた・・・・
―――だ、としたならば、いよいよもってこの方面の攻略に本腰を入れてきたか・・・と、そう思えなくもなかったのですが・・・。〕
ヨ:ようこそ・・・わが砦、パロアへ・・・
―――して・・・キュクノス様におかれましては、一体何用でこちらの方面に・・・?
上層部の方々は、いよいよもって本腰を入れてきているのでしょうか・・・。
キ:(キュクノス=アムド=オズモ;?;?;カ・ルマ七魔将の一人であり、畏るべき武器の遣い手でもある。)
んん〜〜―――?ああ〜〜―――??
はっ―――・・・オレはただ、コキュートスでうじうじと待ってられなくてなぁ。
まぁ・・・退屈しのぎと、これからのウォームアップも兼ねて、こっちへと出向いてきた次第だ。
オレの事は気にも留めなくてもいいからなぁ―――・・・その代わり、好きにやらさせてもらうぞ。
ヨ:(ビリビリ)そ・・・・そういうことであれば――――(ビリビリ)
(な・・・なんとも凄まじいチカラを感じる――――・・・
これが・・・これが―――かの“魔将”様の実力というわけか!!
フフフ・・・私たち兄妹は、つくづくついている―――)
〔しかし、その見解は間違っていました。
そう―――・・・実は、キュクノスは何の気なしにここに来ており、いわばレクリエーションの一環だとさえ思っていた・・・
いわゆるところの、体(てい)のいい退屈しのぎだったのです。
それを聞いたヨミは、恐れを知るどころか逆に尊敬の眼差しをし、
その妹であるヨキも、喜んで自分の躰を魔将に捧げ、これからの勝利への歓待をしたのでした。〕